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再度の秘かな変身の向こうに
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 幼い頃の自分や友達へのいじめの記憶はなかなか消え去りません。その辛い記憶がこの物語の出発点です。
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76回 〜参っちゃったなあ〜

2005/12/31 21:19
 夏休みに入ってからはお局様はワタシを自宅囲い込み作戦に出ちゃった。曰く

『マリアちゃん、この休みは丸ごと私に頂戴ね。いいでしょ。しっかり特訓してショウを全部征服してスーパーモデルの評価を確実にするの。』

『マリアなら間違いない!私がしっかりコーチするから任しておいて。だからお願い!この二ヶ月は私のお家で寝泊まりして、私らの娘になりきって!』

 参っちゃったなあ。二ヶ月間をそっくりお願いする決心はついていたけど、お局様の娘になり切れなんて言われても…。

 ワタシはお局様の心が読み切れず、しばらくご無沙汰している母ちゃんの顔を思い出していた。

 返事に窮して目を白黒させているワタシを、お局様は問答無用に、休み中のマリア用に予定してあるという部屋に連れ込まれた。

 来客用というその部屋は贅沢そのものだった。そこでワタシはお局様の娘を二ヶ月間やらざるをえないと思わせられる多くのものを見せられた。

『これ見て!全部私が用意させてもらったマリア用の下着類。子供のための買い物なんて初めての経験でしょ。楽しかった!どうぞ遠慮なく使って!』

 ワタシはお局様が開かれたチェストの中を見てホント仰天した。高価なランジェリーや室内着がずらり揃っている。百貨店などで横目でにらんでいたものだ。

 お局様の熱い思いにワタシは圧倒されて「これみんなワタシが使ってもいいのですか?」と半ば娘になる承諾をしたかのようなことを口走ってしまった。お局様は

『そ、気に入ってくれたらホント嬉しい。マリアが来てくれることを期待して、準備してあることまだあるのよ。』

『一つは英語が出来て料理が得意なハウスキーパーを予約してあるの。それにね、あなたに合うウエアを捜しに、我が社の専門コーデネーターがあちこち手を回して捜しているの。』

『マリアがOKしたらすぐに集めて試着となっているのよ。これね、私の大きな楽しみ!』
とおっしゃる。

 ワタシは完全に退路を断たれていることを自覚せざるをえなかった。参っちゃうな。このやり方でお局様はファッション界を牛耳ってこられたのかな。

 負けました。ワタシは完全敗北!全面降伏!          〜続く〜

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75回 〜二回生の夏休みに〜

2005/12/30 20:52
 特訓に次ぐ特訓の中で二回生の夏休みがやってきた。お局様がハッパをかけられたようにすぐさま百貨店のプレタポルテショウへの出演だ。

 小規模なものでモデルの数も少数。その中でワタシは中心的役割を務める。先輩を差し置いて申し訳ないけど、お局様の差し金だから致し方ない。

 その先輩の強いやっかみの視線を浴びながらワタシは四人のスタッフに囲まれて準備に入った。

 お局様の差し金といえば、あのモデル養成校の生徒たちとの共演のショウへのワタシの出演も、実はお局様の画策で実現したものらしい。

 司会者はワタシの紹介に「ニューヨークから来た日系三世のスーパーモデル!」とやっている。

 それは随分オーバーだよと思いながら舞台の端のスポットライトの中に立つと割れんばかりの拍手!

 中に「マリア!」の声も混じる。ワタシはもう嬉しくなって客席に軽く挨拶しながら特訓通りの演技に入った。

 キャーッという声が上がるとワタシは思わずその方角に下手なウインクを送る。するとドッと会場が沸く。特訓にないアドリブに次ぐアドリブで夢中の舞台の連続だった。

 終わるとお局様が嬉しそうな表情でバックステージに登場。他のモデルたちが帰り支度を止めて挨拶に集まる。

 軽くあしらってお局様はワタシに英語で「上出来!マリアらしい独特の舞台だった。」と声を掛けて下さりなんと握手を求めて手をさしのべられる。

 ワタシは「サンキュウ!」とその手を取って少し片膝を曲げ腰を落とす洋式の礼を。可能な限り優雅に。

 お局様はなんとワタシの頬にキスまでも…。他のモデルたちの驚異と羨望のまなざしを浴びながらワタシは晴れがましさに身体が痺れた。      〜続く〜



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74回 〜変な具合〜

2005/12/29 19:17
『マリアの場合、怖いもの知らずでやっちゃって大成功したわけね。そのわけマリア自分でわかる?答えはね、その身体と顔とそして若さ。』

『この三つのどれが欠けても怖いことになったと思うのよ。若さというのはフレッシュさということ。』 

『フケたマヌカンがウインクしたって客席はひくばかりなの。マリアだって最初のウインクにあんなに学生たちが喜ぶとは思わなかったでしょ。』

『そうなんです。あれでお銚子に乗っちゃって、二回三回とやっちゃった。』

『マリアちゃんのウインク一千万ボルト級ね。誰でもあれやられると痺れるなあ。でもね、問題はこの後!これ見せられるとお客は次も見なくちゃ承知しないものよ。』

『問題はそこ!飽きさせないための飽くなき努力が求められるの。それが出来なかったら即失速よ。だから誰も出来ないことなの。その怖いことをマリアちゃんはやってしまった!』

『ごめんなさい。どうしよう!ワタシ…。』

『飽くなき努力しかないわね。でもマリアちゃんなら当分大丈夫!まだ二十歳だろ。それに身体の線は綺麗だし、皮膚も素晴らしい輝きを持っている!』

『舞台のマリアをスポットの中で見ると、いやが上にもそれが強調されて…ホントワタシでもため息が出そうな程だった。』

『学生たちがキャアキャア騒ぐのは当然よ。マリアは学生たちにとっては既にカリスマね。技術の未熟さなんて問題外。凄いね、マリア!』

『…それはそうとマリアちゃん、こちらに来た時は私らの娘になってね。しっかり甘えていいよ。』

 オヤオヤ、変な具合!あの気丈なお局様がウエットになっちゃてる!お局様は大切な宝物を扱うようにワタシに特訓を付けて下さった。

 ワタシは嬉しくなって、この幸運を感謝して、一生懸命に特訓に取り組んだ。思いもかけない新しい人生が展開してきている!          〜続く〜

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73回 〜やりすぎだよ!〜

2005/12/28 19:18
 お局様は昨日のビデオの記録を再生しながら、いいところ拙いところをそれぞれ取り上げられた。

 こんな全ての記録があるなんて!ワタシは恥ずかしくて直視できず、お局様にこっぴどく怒られた。

『何照れてるの!しっかり見て直す所を頭に入れておくのよ。それから練習で身体にしっかり覚え込ませるの!』

 全くこれはワタシじゃない。かっこいいモデルが客席に愛想を振りまいている!やりすぎだよ、これは。

 無意識に基本からはずれてサービスに傾きがちな自分を、ワタシは大汗をかく思いで眺めた。

「さあ、練習始めようか。」お局様はまずスポットライトへの対処の仕方を再度確認され、昨日の様子から問題の箇所を取り上げて特訓となった。

『アノウ、ワタシ、無意識に客席にサービスしてるんですけど、コレッて…。』

『そうねえ、あんなにサービスしてた初心モデルは初めてよ。実はあれがあんなに受けた原因の最たるものなの。だから分析が難しいのだけど。』

『大うけに受けた最大の理由はこの過剰とも見えるサービス。第二第三が若々しい見事な伸びやかな身体と愛くるしい表情豊かな小顔なの。これは理事会でも一致した意見よ。』

『じゃ、技術面はやっぱり?』

『そう、全くの未知数!一応の土台はありそうだけどまだまだ評価できる段階じゃないって。当たり前でしょ。特訓始めたばかりだもんね。そんなに甘くない!』

『客席へのサービスのことだけどね、もちろんセオリーにないことだけど、殆どのマヌカンがやらないわけは別にあるのよ。』

『それはモデルが目立っては商品紹介にはマイナスになるばかりだしネ。それに客席がひいた時のことを考えると怖くてとても出来ることではないの。』

『それに全体のバランスも大切だし、だからセオリーにもないことになっているの。バランスも崩さず、商品紹介にマイナスにならない自信があればどうぞ!ってところかナ。』                      〜続く〜

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72回 〜運命共同体〜

2005/12/27 19:40
『あのね、学生たちのサインね。あれマヌカンの実力と人気のバロメーターなの。ヒドイ時はパラパラね。去年がそうだった。』

『普通三年も同じマヌカン使い続けるといけないの。あなたは最高の勲章戴いたわね。長く見てきたけど昨日のような熱気は初めて!』

『人気の方が先行したのは間違いないけど、それにしても凄かった。大変だったでしょ、あのサイン。指の痛み、もう大丈夫?』

『有り難うございます。びっくりしたけど大変嬉しかったです。でも、みんな皆さんのおかげです。』

『そうね、有頂天になってはいけないわね。この夏休みが本当の勝負よ。あなたの評価が決まるわ。どう?夏休み、フル回転する意欲ある?』

『ハイ、スタミナには自信がありますのでフル回転させて下さい。』

『ヨッシャ!その気力やよし!私もしっかり後押しするからね。進むしかないのよ、昨日の大ブレークでね。』

『昨夜の理事反省会でも期待する声が溢れ返っていたから。もう発表会のモデルで当分悩む必要がなくなったという点でも一致していたのよ。』

『実力でも一応の評価を得たわけ。あの若さとあの身体と顔に太刀打ちできるモデルはそうそうは見つからないというのが一致した意見よ。後は場数を多く踏むだけということ。だから頑張るのよ。』

『ハイ。全くわからないことばかりですので、今後もご指導宜しくお願いします。』

『そんなに堅くならなくてよろしい。あなた、運命共同体って言葉知ってる?マリアは…そう、ここではあなたはマリアなのよ。彩子って名はなし。』

『マリアは期待の専属モデルでしょ。だからマリアちゃんと会社は運命共同体なの。大船に乗ったつもりでいいの。安心して全て任しておけばいいのよ。』
                           〜続く〜









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71回 〜パパは運が〜

2005/12/26 19:10
 翌日の日曜日午後、人気のない社内のミニステージでお局様と。お局様はお会いした時から上機嫌。

『マリアちゃん、見かけによらず舞台度胸満点なのね。見直した!ホント今後が楽しみよ。』

ワタシは「いいえ、もうガチガチでした。冷や汗どっさりです!」と。

『アッ、最初のところライトがきたのでしょ。ライトの設置ミスね。練習ではあそこまでは想定外だったものね。正直なところしまったと思ったのよ。』

『ところがマリアちゃんたら落ち着き払って客席の隅々に大きなおメメを更に大きくしてフェイスサービスをするんだもの。』

『あれには負けたわ。拍手が来たでしょ。あんなの見たことないからよ。誰も。びっくりしたのね。』

『フエイスサービスだなんて。ワタシ、立ち往生してしまって…。』

『あれね、あなたの顔と身体の勝ちなのよ。並のモデル、いや殆どのモデルじゃああはいかないの。客席はひいてしまうわ。』

『それなのにあなたは拍手を呼んだのよ。自信をお持ち!母さんに感謝する事ね。スポットに浮かび上がったあなたはとても素敵だったわ。』

『長身のスリムな素晴らしいスタイルが魅力いっぱいでね、それだけでも凄いのにそれに可愛いフェイスと人を惹きつける大きな輝く瞳でしょ。息をのむ思いでワタシも見たわ。』

『天は二物を与えずって言うでしょ。あれね、マヌカンの世界のためにあるようなものなのよ。』

『顔も身体も超のつくマヌカンはホント少ないの。マ、この国では皆無と言っていいわ。』

『なのにマリアちゃん、たとえ整形とはいえ二物を手に入れているのよ。それにあのようなお客の心をつかむ舞台度胸があるのだから鬼に金棒よ。』

『あの時々見せたすり足の歩き方やオジキはバレーのものでしょ。特訓ではやってなかったものだけど、習ってたの?』

『ハイ、中学まで。あれマズかったでしょうか?』

『ウーン、そうネ、サンプルにもよるけど。消化不良なら勿論マズいに決まってるけどね。あなたのはギリギリね。今後は滅多に使わないこと。』

『でも、今回はあれが大いに効果的だったわね。かといってそう度々使えるものではないのよ。第一ハイヒールですり足なんて無茶よ。あれはペケ、ペケ!』

『わかりました。今後気をつけます。』

『それにしてもあなたの身体は素晴らしいわねえ。バストにチョット手を加えただけで最高になったわ。』

『綺麗な身体のラインに透き通る肌!それだけで本当に見物なのよ。それに表情豊かな綺麗な小顔なんだから学生たちが沸くのは当然ね。』

『最初マリアがスポットに浮かび上がった時、学生たちは電気に打たれたのよ。それから気づいて拍手になったの。それほどにマリアはアピールしたの。』

『今まで見たこともないほどのモデルだものね!こんな子が一年間もスカウトされずにいたのが不思議と言えば不思議。パパは運がよかったとしか言いようがないわ。』                            〜続く〜

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70回 〜もしかしたら〜

2005/12/25 19:16
 舞台の方がなんだか騒々しいの。気にしながら撤収にかかっていると、またも司会者が顔を出し「ミス・マリア、サイン……。」下手な英語でなにやら言ってる。

 通訳の顔を見ると彼女は司会者の後を追って会場を見に行った。そして大慌てで帰ってきた。殆どの学生がサインを希望して帰らないのだと。

 ワタシはお局様の「もしかしたらもしかする」の意味はこれか!と納得しながら通訳と一緒に会場に急いだ。

 生徒を整理しておられたお局様はワタシの顔を見ると「マリアまだお終いにならないの。頑張って!」と大声で伝えられた。勿論、達者な英語で。

 ワタシは生徒の数の多さに唖然としながらも、わき上がる「マリア!」の声に励まされて用意されている席についた。

 何がなんだかわからないような騒動の中でのワタシだった。こうして、微笑みとウインクの型破りなマヌカンが記念すべきその第一歩を踏み出したのだった。

 帰りの小型マイクロの中でヘア係の女性がワタシの肩をもみメーク係が痺れた指を冷やしたタオルで癒す。

 ワタシは恐縮して辞退したけどみんなは交代でワタシの世話をしようとする。思いがけない大成功でみんな興奮状態だったの。

 お局様からの伝言で後かたづけをすませたら後は自由ということだった。おまけにご祝儀として一人ずつ一万円がわたされていた。

 みんなはルンルン。チームで夕食に行こうと盛り上がっている。アブナイ!アブナイ!ワタシは悪いけどノーサンキュウ!ここからは隠密行動。

 ワタシは自分のご祝儀の上にもう一枚上乗せして通訳に押しつけておいた。「また宜しく!今夜はしっかり楽しんで!これは皆さんでどうぞ。」と。
                               〜続く〜

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69回 〜カーテンコール!〜

2005/12/24 13:23
 バックステージに戻るとスタッフから「お疲れ様!」の声が飛んだ。通訳が訳してくれた。

 そちらにニコッと笑顔を送った時、会場の拍手の音がそれまでの乱打から斉打に変わり一段と大きく聞こえてきだしたの。

 通訳が腰を浮かせた時、舞台の袖に通じるドアから司会者が顔を出し「カーテンコール!スタンバイ!」と叫んで姿を消した。

 メーク係とヘア係が慌てて飛びついてきた。誰の頭にもなかった事態だ。そこへお局様が飛び込んでこられ

『急いで!服はこれ!髪はナチュラルに!服に合わせてリボンも付けて。アッ、リボンはいらないか。顔は出来るだけ自然に、でもアクセントはつけてね。』
と指示されて急いで出て行かれた。

 司会者に急がされながらワタシは閉ざされたカーテンの内側の中央に立たされた。

 同時に全ての照明が落とされスポットが私の前のカーテンをとらえた。拍手がピタッとやんだ。

 カーテンが左右に開いていく。ワタシはスポット照明の中を二三歩前進すると洋式の礼を深々とおこなった。

 やんでいた拍手が一斉に高まりキャーという声も混ざっていた。顔を上げると、司会者が作品の制作者の講師らの登場を告げ始めた。

 思いがけないカーテンコールから解放されワタシはやっとミネラルウオーターを口にし一息ついた。

 スタッフたちがいろいろ賛辞を口にし、通訳がそれを訳してくれる。それを嬉しくきいていると、また異常事態が…。               〜続く〜

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68回 〜初舞台で〜

2005/12/23 12:19
 やがてワタシの出番を告げるアナウンスが流れた。特訓の時と同じように舞台へ。ワタシはここで面食らったの。

 正面のライトが真っ正面からワタシを狙っている。眩しい!どこがキャットウオークの入り口なの?練習ではこんな事は想定外なのかやってない。

 ワタシは落ち着け!落ち着け!と自分に言い聞かせながら見えない会場を隅から隅へ可能な限り大きく目を見張ってゆっくりと見回した。目を慣らすために…。

 すると思いがけないことにシーンとしていた会場のあちこちから拍手がわき起こった。なぜか会場が沸き始めている!

 ワタシは意味もわからず思わず嬉しくなって笑みが浮かぶのを押さえられなかった。

 拍手に応えるようにワタシは少し進み出るとゆっくりと姿勢を落とし会場に向かって挨拶をした。

 また一段と拍手がわいた。こうやって私の目はすっかりライトになれていったの。

 拍手が収まるのにあわせてワタシは特訓した動きに入った。司会者の紹介する声がしっかり聞こえる。もう大丈夫!

 控え室に戻ると早業の着替えだ。そしてすぐにキャットウオークへ。その間は司会者の苦心のトーク。これが何度か繰り返された。

 やっと慣れた頃には終わりだ。最後のステージが終わる頃ほっとして肩の力を抜きながらキャットウオークの端に向かった時、客席から盛大な拍手が怒った。

 キャーッという悲鳴のような声も響いた。ワタシは電気に打たれてこのまま舞台裏に引っ込んではならないという気持ちに襲われたの。

 何かを期待するかのように拍手の音が小さくなった時、ワタシは歩みを止め客席に向かってバレー仕込みの洋式の礼をおこなった。可能な限り優雅に…。

 再び拍手が勢いを取り戻す中をワタシは客席を笑顔でゆっくり見回してやおらきびすを返した。

 するとワタシを浮かび上がらせていたスポットライトがスウッと絞られて消えていった。まるで打ち合わせてあったかのような呼吸だった。      〜続く

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67回 〜あだ名〜 

2005/12/23 07:59
 翌日の日曜日は全休。ワタシは議員事務所に顔を出してみた。もしかしたらガイドの仕事があるかもと。

 事務所では第三秘書が支持者の到着を待っていた。やっぱりガイドの仕事はあったの。よかった!

 第三秘書は嬉しそうだった。お年寄りの夫婦三組だった。こういうのやり甲斐あるお客さんだ。ワタシは誠意を込めて案内した。

 その後、モデルの仕事は月四回の土日の内一回だけの二日間の集中撮影で専属雑誌のものは済ますようになった。

 残り三回の内二回は午前中のみの特訓だった。何もない一回は事務所に出かけた。

 午前中の特訓は核心の部分に入っていた。いかにして全身を使ってごく自然に表現をするかということ。サンプルの違いによっての表現の違いもたたき込まれた。

 しかし、こののんびり調の生活はすぐに崩れた。ミス・マリアを貸して欲しいという申し出がボチボチ入り始めたの。

 ファッションショウへの出演だ。いよいよ奥さんに習ったことが役立つ時が来たの。奥さんは「マリア、もう大丈夫!自信を持って堂々と自分を押し出すのよ。」と励まして下さった。

 奥さんは「もしかしたらもしかするかもしれないから『マリア』のサインを練習しておきなさい。」と示唆を下さった。

 ワタシはどういう事かわからなかったけど、ペン字には自信がある。かっこよいのをデザインして練習しておいたの。

 手始めは業界最有力の服飾専門校とモデル養成校とのタイアップの定例の発表会だ。

 プロのモデルはワタシ一人。奥さんのお話によると、例年トップ級の注目モデル一人だけが講師たちの作品を着るのだそうだ。

 それが今回はワタシに白羽の矢が立ったのだそうだ。生徒たちの作品は提携のモデル養成校の生徒たちが着てみせるのだと。

 さすがに業界最有力というだけあって招待客をはじめ出席者は大勢だ。モデル養成校の生徒たちは張り切っていた。

 ワタシは奥さんの指示に従って途中から控え室に入り準備を始めた。今日は女性ばかりの会場なので、通訳はいつもの男性ではなく初対面の女性だった。

 メークアップの途中、奥さんが控え室に顔を出されドレス係へメモを渡し指示を与えて忙しく出て行かれた。

 奥さんの姿が見えた時、部屋の空気が一変し緊張が走ったので、ワタシは通訳の女性に「なぜ!」と尋ねてみた。

 通訳は「あの人はこの世界で隠然とした力を持つ実力者。」と教えてくれた。小声で「オツボネサマのあだ名もあるの。」とも。          〜続く〜

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66回 〜専属契約〜

2005/12/22 13:22
 次からは午後だけ出社するようにと伝えられた。勿論それは撮影のない時のこと。

 帰る時、奥さんからお給料の振り込まれた通帳を手渡された。「大切にするのよ。」と一言つけたして奥さんはニッコリされた。

 開いてみて驚いた。予想もしなかった高額な報酬だ。ヒェー!こんなに戴いていいのだろうか?奥さんはそのワタシの反応を見ながら

『専属契約だからね、高いのよ。その代わりよその雑誌などに出ることは駄目なのよ。よそから直接接触があっても耳を貸さないでネ。』

『そういうの、全部私か副編に任せて。ただ雑誌関係以外のファッションショーには出てもいいの。その接触があったら私に言って。』
と念を押された。

 次の土曜日、午後だけと思いきや、朝から来て欲しいとの連絡。慌てて出社してみるとあのチームが揃っている。

 エッ!といぶかるワタシにマネージャーが、ノー!ノー!と今日は撮り直しではないと言い訳し、次号の前撮りをしておこうということになったのだと説明してくれた。

 カメラマンのC氏の予定に余裕がある今日を確保したのだと。メーク係とヘア係の仕事が進んでいる内に副編の奥さんの登場。

 チームのみんなが丁寧な挨拶をする。奥さんは一体どういう地位の人なんだろう?

 奥さんはスタイリストも兼ねる進行係を呼びつけて今日着る衣装について細かい指示を出されると、皆に「じゃ、いいのをお願いね!」と声をかけられ、ワタシには軽くウインクを送って出て行かれた。

 C氏の到着前、撮影の準備をしながらカメラマンの助手は誰に言うともなく

『俺な、前回の撮影でマリアの撮り方のコツがつかめたよ。普通はポイントを目に置くんだが、マリアの場合は目だけじゃないんだ。』

『唇なんだ。マリアは目以上に唇の表情が豊かなんだよ。表紙の一枚がその証明だ。あの写真で誰もが目の素晴らしさに惹かれるだろ。違うんだなあ。』

『あの写真に素晴らしさを味付けしているのはあの微妙なかっこいい唇の表情だよ。マリアは今にいいトップモデルになるぜ。おっとこれは通訳なしだ。』
としゃべっていた。                    〜続く〜

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65回 〜慣れないハイヒールに〜

2005/12/22 07:54
 日曜日には出来たばかりの雑誌を見せてもらった。なんと表紙にもミスマリアの顔がドッカーンと出ている。

 先ずは細くて長い頸がいやが上にも印象的にとらえてある。パッチリ大きく見開いた目も見る人をとらえて離さない。着け睫毛が効果的で自分ながらびっくり。

 綺麗な印刷で美しい肌がいやが上にも印象的に写されている。雑誌の内部には勿論関連の写真が。奥さんによると、あまりに出来がいいので大抜擢だと。

 表紙のことだ。彩子の顔が入念にメークアップされてミスマリアの顔に大変貌している。怖いほどに。こうなると全く別人だ。

 なんだか面はゆいようでそれでいて他人事のような何とも変な気持ち!主役のドレスがかすみそう。

 昨日発売になったばかりだというのにもう翌日の今朝には表紙のモデルについての問い合わせが二三社からあったそうだ。どういうモデルか、アクセスは?

 奥さんは「申し込みが殺到するわよ。この世界はフレッシュさが大層喜ばれるからね。」と我がことのように嬉しそう。

 この日は社内のミニステージで実際に衣装をつけてのアピールの仕方も教わった。また過去のファッションショーの記録テープを見ながらいろいろ教わった。

 そしてまたタイツ姿での今見た身体のこなし方歩き方の特訓だ。全くごまましはきかない。

 何度も何度も繰り返しやり直しをさせられてワタシはハイヒールのバンドに足の皮膚を食われてダウン。

 絆創膏で手当てして再開。奥さんは貪欲だ。ワタシは慣れなおハイヒールには苦戦の連続!                         〜続く〜 

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64回 〜三足のわらじ〜

2005/12/21 19:10
 久しぶりの事務所は様子がガラリ変わっていた。第二秘書の後に第一秘書よりも年配と見える男性が座り、専門学校を出たばかりの女性が事務員として入っていた。

 夜間の泊まり込み要員は未定らしかった。ワタシは土日が都合で来られなくなったことを伝えて謝ると、第一秘書は大層残念がられた。

 新しい女性事務員との間に交代勤務の取り決めがしてあるので気兼ねなく今まで通りに講義が済んだら来てくれとおっしゃる。ワタシが恐縮すると

『彩ちゃんには一年間苦労かけたし大変迷惑もかけたからね。是非自由にやってきて欲しいよ。幸いその条件にあった人に来てもらっているから大丈夫だよ。』
と言われた。

 こうしてワタシは二足の草鞋ならぬ三足の草鞋を履く身となったの。

 土日の出社には副編の奥さんが秘密の基地で迎えて下さった。マリアへの変身を手伝って下さるためだ。

 先ずは髪を下ろし、入念なお化粧。最も難しいのが付け睫毛。ついでアイシャドウ。これらは自分一人で完璧に出来るまでになるのが大変だった。

 社屋に移ると私を待っているのはモデルとしての基礎訓練。歩き方はもちろんのこと、身体のこなし方の細部までを事細かに繰り返し特訓するのだ。

 歩行の基礎はタイツ姿でごまかしのきかない姿で行うの。それに身体全体での表情の表し方まで。

 このほかに心構えなどの精神論もきかされた。それに肌の手入れ方法から舞台化粧の方法まで。奥さんは何でも出来る人だなあ。         〜続く〜

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63回 〜撮影は深夜に〜

2005/12/21 07:21
 小休憩中、ワタシはマネージャーに前回の撮影が撮り直しになったわけを尋ねてみた。悪かったのはモデルのワタシ?それとも?と。やっぱり気がかりだったの。

 マネージャーは、それはわからない、ただクレームは副編の奥さんからも「マリアの佳さが出ていない!」と出されたと知らされた。

 奥さんのクレームと聞いてヒヤリとした。それだったらあんなにプリプリするんじゃなかったと。

 気を取り直して「副編の奥さんは副社長?」のワタシの問に通訳は苦笑いしながらノー!それ以上の実力者だ!肩書きのない実力者だと説明した。

 ワタシが首をかしげると、とにかく偉いんだ!と。

 撮影は延々深夜近くになった。撮影の途中で事態を知った副編と奥さんも駆けつけられた。

 奥さんは着付けやメークにも手を貸され撮影ははかどった。後で知ったことだけどC氏のような忙しいカメラマンはチョイ撮って後は助手に任せるのだそうな。

 最後の一枚を撮り終えるとスタッフは期せずして万歳をした。記録係が最後の写真を見せに来た。

 いい感じ!ワタシは思わずカメラマンにサンキュウ!と声をかけ手を差し出した。彩子だったらそんなこと絶対に出来ないはずだけど。

 カメラマンは少し照れながらワタシの手を握った。握った手を振りながらふと気づくとそばの助手やマネージャーなどの男性陣の羨ましそうな顔。

 ワタシは調子に乗って躊躇することなく助手に手を伸ばした。マネージャーは向こうからさしのべてきた。鼻の下が伸びている!

 欧米ではこの時ホッペに軽いキスするんだろうけどさすがにそれは無理。続いて女性陣にもワタシは握手を求めた。

 秘密の基地へ向かう副編の自家用車内で副編は「彩ちゃんもなかなかやるね。」と笑った。

「三世ならどうするかとワタシ一生懸命です。何か変でしたら教えて下さい。」に奥さんが「大丈夫。彩ちゃんは落ち着いているから今のペースで頑張りなさいよ。」と励ましてくださった。

 この時の打ち合わせで、ワタシは今後は特別のことがない限り土日のみの出社ということが確認された。

 スタッフに徹底しておくとご夫妻。ワタシが過去一年間の議員事務所勤めのことを話したことへの、ご夫妻の暖かいご配慮だった。         〜続く〜

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62回 〜それやったらバレる!〜

2005/12/20 19:49
 撮影はどんどん進んだ。着付係やメーク係は若い女性なのでさすがにあまり冷たくは出来ない。

 今回は記録係の女性がポラロイドでいちいち確認撮影をしている。それを確かめて次へ進むの。前回はこれがなくて失敗したのかナ。

 一寸した時間的余裕を見てはマネージャーがその確認写真をワタシのところへ持ってきて見せてくれる。

 サービスだ。彼の日本語がそれを語っている。記録係の「触らないで!」の声に彼は「ご機嫌とっておかんといかんだろ。サービスだよ、サービス!」

 ヘアーを直してもらいながらポラロイド写真を見てワタシは驚いた。これほどに大変身して写っているとは!

 小顔が強調され、日本人離れと評される肢体が魅力的な衣服を装っている!彩子ではないまさしくミスマリアが写っている!

 ワタシはつい嬉しくなり頬がゆるむのを覚え「素晴らしい!大満足!」と英語で口走った。

 マネージャーは我が意を得たりとチームに伝えている。それからはワタシの表情は豊かになったみたい。

 それを見てカメラマンはマネージャーに「サービス作戦大成功!」と伝えている。

 女性スタッフには絶えず笑顔でサンキュウ!の声を忘れなかったワタシだったけど、その効果が出ちゃった。思いがけない形で。

 女性スタッフがワタシの肩を持ち始め男性スタッフと対立したの。日本語でそれをやるからワタシに筒抜け!

「チョット!そんなに悪く言うものじゃないわよ。」「何がヨ、チョット可愛いといい気になってサ!」「バカね、無理して来てもらったんでしょ。」とやるやる!

 ワタシは女性陣に拍手したかったけど、それやったらバレる!
                              〜続く〜  


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61回 〜約束違反だ!〜

2005/12/20 06:51
 雑誌の撮影は、ゲラ刷りが出来あるにつれて、ワタシをモデルにした写真への追加や注文がワッと吹き出したと、通訳から電話があり急遽呼び出された。

 水曜日の午後だった。副編や奥さんの指示かと尋ねると、そうではないが今回はお二人には内緒で願いますという。現場のミスだとは知られたくないのでと。

 仕方なく午後の講義を休んで例の秘密の基地のマンションで一人で変身して出かけた。
 
 ワタシは甘い顔を絶対見せないつもりだった。講義を休まされるのは約束違反だ!最初からこれではたまらない。

 ロビーに入るとマネージャーが飛んできた。「申し訳ない。写真原稿の期限が今日中なので無理をお願いしました。アイアムソーリー!」と低姿勢。

 ワタシは黙ってグングンスタジオに向かった。通訳のマネージャーには悪いけど彼からまず痛めつけねばチーム全体に徹底しない。

 ワタシはガラにもなく心を鬼にしたの。大学は大事。背に腹は替えられない!彩子だったらとてもこんなに強気にはなれないだろうに、変身すると心まで変わるの?

スタジオに入るとマネージャーは日本語で「機嫌悪いから要注意!」とチームに伝えている。

 ワタシには全く通じないと思っているから平気で大声で内緒話をしてる!ワタシは表情を崩さずマネージャの英語を待った。

 マネージャーは「短時間に多量の写真を撮り直すので宜しく協力を願います。」と低姿勢。

 今日のカメラマンはC氏ではなく前回は助手だった男だ。前回はC氏に対し低姿勢だったのに今日はでかい態度。ヤナ奴、もう無視!        〜続く〜

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60回 〜アッ、そうか!〜

2005/12/19 20:17
 姉御と子鹿ちゃんには再度モデルの件の口止めをした。乗り気でなかったワタシがなぜ契約する気になったのかも話した。

『極秘に変身して可能性を試してみるから、お願い、秘密にして!』
と。

 二人は確約してくれた。そのうち子鹿ちゃんが首をひねってワタシをジロジロ眺め始めた。

『彩、モデル始めて何か変わったね。なあーんか変わった感じ!どこが違うのかなあ?』

 姉御は

『そうかなあ?ちっとも変わってないよ。』
と。

 ワタシは子鹿ちゃんの観察眼に脱帽。

『実はワタシやっちゃった!モデルには胸がないのは致命的と言われてほんの少しね。』

『アッ、そうか!豊胸手術だ。道理で妙に色っぽくなったと感じてた!』
と子鹿ちゃん。

 姉御は

『そういわれてみればそうか?』
と首をかしげる。

 子鹿ちゃんは

『だからあなたはセンスが磨かれないのよ。微妙な変化も違いもわからないのでは駄目なの!』
と厳しい。

『参った!』
と姉御。

 子鹿ちゃんは

『なんだか彩ちゃんが私たちと離れていってしまうような気がするわね。彩はきっと成功するから。無類の努力家だもの。せっかくいいお友達になれたのにね。』
と言いだした。

 姉御は

『オイ、オイ、嫌なこと言わないの!彩はそんなんじゃないよ。だろ、彩?』
とワタシの顔をのぞき見る。

 ワタシは勿論それはワタシの方から願いたいことなのだ。生まれて初めてワタシの全人格に己の全人格を対等にぶっつけてつきあってくれる最高の友達だもの。

 いつまでもいい友達でいて欲しい。お互いがどんなに変わっても。

 子鹿ちゃんに鋭く見抜かれた豊胸手術の実感は実はワタシにはあまりなかったの。

 顔のように明らかに変わるものでもないし、バランスを整える程度のものだったからそれほど意識するものではなかった。

 顔の時のショックがあまりにも激しかったので今回はほんとに蚊に刺された程度にしか感じなかったの。…一寸やせ我慢かな?            〜続く〜


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59回 〜着せ替え人形〜

2005/12/19 06:11
 豊胸手術が終了した時、ワタシは奥さんに報告に行った。そういう約束だったの。

 奥さんはワタシを試着室に連れ込んでいろいろ試着させて出来映えを確かめられ、感激した面持ちで社内電話で「パパ、ミスマリアの仕上がり見る?見事よ!」と副編を呼びつけられた。

 私はお二人の前で再びあれこれと試着を繰り返した。副編はポラロイドカメラで着替えるたびにシャッターを切っておられた。

 奥さんは「これが最後!」とビキニの水着をわたされた。こんなギリギリのものは一度だって身につけたことはない。

 目茶苦茶恥ずかしかったけど、意を決してそれでお二人の前に立ってポーズをとった。奥さんは

『パパ、これは撮っては駄目!マリアの身体のラインはもうこれ以上ない理想ラインね。芸術品クラス!最高!』

『ホント見事。日本人にもこんな綺麗はラインがあるんだ!パパ、これほど素晴らしいの、もう見ることないと思うよ。』

『ミス・マリアの最高の輝きね。でも勿体ないわ。どこかのミスコンに出たら絶対に優勝して一度に箔がつくのにね。』
と賞賛しきり。

 ワタシは自分のことは自分ではわからないから面はゆいばかり。

 土曜日、撮影ははかどった。カメラマンのC氏は新しい被写体に大いに写欲をそそられたらしくスタジオは活気にあふれた。

 先日カメラマンだと紹介された男はC氏の助手を勤めていた。次の雑誌の表紙や紙面を飾る写真が次々に撮られ、ワタシは着せ替え人形宜しく着付係によって装いを取り替えられた。

 その度にワタシはメーク係に化粧や髪を手直しされた。そのとき、主役はモデルのワタシではなくスタッフたちだとしっかり思い知らされたの。

 撮影はあっという間に終わりC氏は忙しく姿を消した。その後助手によって少々のだめ押し撮影があって終わり。

 豊胸手術の手術代は会社持ちだった。後から奥さんに知らされたのだけど、実はワタシの契約金から出費されたのだそうだ。出社時の派手な衣装も同じ。

 大学の押さえた服装から大変身する基地は副編所有の、多目的用に契約しているマンションの広い一室。

 ここでワタシは野末彩子からマリア・光田に変身するの。隠密裏に。最初の内はその変身に奥さんがいつも手を貸して下さった。ワタシが変身に慣れるまで。これも隠密裏!                       〜続く〜

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58回 〜七人のスタッフ〜

2005/12/18 19:43
 ついで私を支援するスタッフ一同に紹介された。カメラマンとその助手。ヘア&メイク係。記録係。マネージャー兼通訳。それに振り付け係。合計七人に。

 ワタシのためにこんなに大勢が…と感激したけど、それはとんでもない錯覚だと後でわかったの。

 この後打ち合わせ段階で一寸した行き違いがあった。ワタシが〈講義のない〉午後の空き時間と土日しか出社しないと言ったのを、スタッフらが怒っている様子なの。

 その理由を聞かれて困ったワタシが「ノー・コメント!」とやったことへの反発?

 大学に通っていることは極秘のことだからノーコメントは仕方ないことだった。ワタシが日本語がわからないことをいいことに、平気でワタシへの不満をしゃべり合っている。

 私は驚いたけど、知らん顔しているよりなかった。大きなショックだった。ワタシは大変な気儘三世娘と見られている!

 夜、ワタシは副編に電話して事情を話した。大学はやめたくないし、このままではチームの士気が落ちてしまうと。

 やはり無理があるのでしょうねとワタシが詫びると副編は「ごめん、ごめん。こっちの手落ちだ。早速対処するから気を悪くせんで欲しい。」と詫びられた。

 マリア・光田は土日以外の出社は不定時だということ。理由は日本語学校や大学の特別受講生として複数の学校に出席するため。

 これが契約の前提条件だと。それから米国育ちだからプライベートな質問はノーコメントと一蹴されるはずだと。こうチームに伝えると言われた。

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57回 〜変身は急ピッチで〜

2005/12/18 08:08
 ワタシの別人化は急ピッチで進んだ。秘密保持のため別人化工作は副編とその奥さんだけで計画実行だった。

 先ずは日系三世のワタシが成田へジャンボで帰国する所から演出する念の入れようだった。

 奥さんはワタシのために派手めな衣装や帽子や靴それに濃い色のUVカットのサングラスなどを調達して下さり、メイクも濃いめに入念にして下さった。

 最も違ったのはくっきりと書き込まれた眉と濃いルージュ。ネックレスやイヤリングも派手なものだった。

 髪型も落差をつけるるために、彩子の時は今まで通り後頭部でまとめて小さく納めるようにするけど、日系三世の時は黒髪を出来るだけ長くヒラヒラと誇示するの。補髪までして。

 旅行用大型スーツケースには、奥さんが見立てて下さった替え着がビッシリ詰まっていた。

 ワタシは成田に着いた形で、出迎えの奥さんと一緒に都心のB誌の社屋に向かった。

 本当は副編としては実際にワタシをジャンボに乗せて成田に降りさせ、それを奥さん以外の社員に出迎えさせたかったのだけど、パスポートで挫折したらしい。

 マリア・光田のパスポートは絶対入手不可能なの。偽造する以外には…。そこまではさすがに副編も出来ない。

 ここまでたどり着くまでに一ヶ月近く準備がかかった。副編と奥さんには大層ご苦労をおかけした。

 副編は新しいモデルをニューヨークのつてを頼って呼び寄せる形を整えられたそうだ。奥さんもニューヨークに二度もとんぼ返りをされた。

 その間に奥さんはワタシの衣装を何点も調達された。それを合わせるためにワタシは夜遅く副編の私宅を訪れた。下にも置かないもてなし…なんだかとても落ち着かない気分の連続!

 成田から東京の社屋に着くと、すぐに社長と編集長に引き合わされた。ワタシは日本語がわからないふりをし英語をしゃべった。奥さんの通訳で通じたふり。

 ワタシは冷や汗をかきながら出来るだけ動作を大振りにお芝居したの。社長さんは一目でワタシを気に入られたみたい。ワタシが日本語が駄目だと言うことで安心して副編に

『美人じゃのう!海の向こうではこんなに見事ナンがすくすく育つのだの。顔も素晴らしいがあの柔らかそうな若々しい身体の方が凄い魅力じゃ。大事に育てることじゃ。副編、手を出しちゃいかんぞ。』
と、ワタシがそばにいるのに通じないと思えば平気なものだ。

『社長、悪い冗談はいわんで下さいよ、女房の前で。マリアには通じないからいいようなものでも。なんか私が女癖が悪いように聞こえますよ。』
と苦笑い気味の副編。

 そうそう、忘れていたけどこの一ヶ月の準備期間中にワタシは隠密裏にほんの少し豊胸手術を受けたの。奥さんの強い勧めに従って…。

 大きすぎない程度にバランスを崩さない程度にギリギリ小さくお願いして。でも、背の高さにバランスをとると、出来上がったのはワタシにとってはかなりなデカパイだった。

 今日のワタシのファッションはその胸のふくらみの谷間を一寸見せるとても恥ずかしいものなの。それで社長さんも大いに痺れたのかな。

 これは蛇足だけど、ヒップの方は今の細身なのが貴重なんだって。もしかして海外へ進出することになった時には大変な武器になるとは奥さんの弁。

 演出次第では高い神秘性も望めると奥さん。これはなんだか眉唾。本気にしないでおこう。                      〜続く〜 

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56回 〜再度の秘かな変身へ〜

2005/12/17 19:25
 そこへ女性の登場。副編が「僕のおかみさんだ。こちら、例のモデル候補の彩ちゃん。」と紹介し、ワタシの持つやっかいな事情を説明された。

 奥さんはその間中ワタシをじっと観察されていた。副編は「どう、君から見た彩ちゃんのモデル資質は?」と奥さんの意見を求められる。

『ルックスは申し分なしね。まるで可愛いお人形!別な言い方したらとびっきりのベビーフェイス!大きな目がチャームポイントね。』

『愛らしい口元に形のいい鼻筋。こんなチャーミングなコが東京にもいたのね。パパ、このルックスに痺れたんでしょ?女の私でも一目見た時目を奪われたものね。ルックスだけで。』

『おい、おい、それはないよ。最初はかなり離れていたし、それに大きな帽子で顔など全く見えなかったんだぞ。その背の高さとプロポーションに惹かれたんだ。』

 副編は懸命に言い訳。

『ちょっと上着を脱いで立って見せて。ごめん、少し触るわよ。肩幅は大丈夫。ギリギリのところ。腰骨の張りもいいね。』

『あなたのプロポーションの見事さはこの腰骨の張りの格好良さががとても効いているのよ。それで一段とウエストの細さが強調されるの。』

『今度は横向いてちょうだい。…身体のラインも最高。ヒップが最高にかっこいい!フレッシュさを前面に出せる身体ね。脚の形や肌も見ておきたいから悪いけどパンツも脱いで。』
と奥さん。

 それはないでしょ!そばに男性が見守っているのに。私が躊躇していると、奥さんはやっと気づいて「パパ、ちょっと席を外して!」

 下着姿のワタシをしげしげ眺めて奥さんは

『あなたお化粧してないのね。スッピンでこの綺麗さ!あなたって顔も身体も肌も驚異・驚異・驚異なのね。この三つはもうそれだけで最高!売れるわ。それにこの脚線美。鬼に美脚ね!』

 と奥さんは興奮気味にまくしたてられ、ワタシに服を着てそこらを自由に歩いて見せてと言われた。

 自由にといわれても狭い室内、ワタシは数歩歩いてはきびすを返しまた数歩という具合。副編も帰ってこられワタシの歩きを見ておられる。

 そのうちワタシはいつもの自分の歩きになっているのに気づいた。最近すっかり板に付いたあのワタシの歩き方だ。すると奥さんは

『有り難う。ご苦労さん。パパのお眼鏡にかなっただけのことはあるわ。素晴らしい素材ね。』

『華奢なようで肩幅も十分だし、それに下半身の土台が意外にしっかりしていて歩きが少しもぶれないの。最高だわ。』

『胸だけがマイナスだけど何とかするとして、別人変身の件は協力しましょう。それだけの英語力があれば大丈夫。日本語は忘れることね。』

『実はね、私たちには子供がいないの。モデルの時は私たちの子供のつもりでいなさいよ。パパも自分の娘には手は出せないでしょ。フフ!』

 最後の部分は聞き捨てならない部分だった。ワタシが目を白黒させていると、副編が笑い出した。

『おい、おい、変なことを言うな。彩ちゃんが本気にするじゃないか。俺は品行方正だよ。』

『それはそうと、まだ彩ちゃんの正式な返事聞いてないね。どうだ、別人変身、モデル界進出に決心ついたかい。俺たち夫婦が自分の子以上の後押しを約束するよ。』

『実はね、B誌でも新しいフレッシュなモデルがのどから手が出るほど欲しかったんだ。そこへ彩ちゃんの出現だ。嬉しかったよ。』

『去年のクリスマスの夜、バスに乗り込む彩ちゃんの姿をチラリと見てから、もしかしたらと随分探し回ったよ。』

『その甲斐あったんだ。まさか大学生とはね。見当違いばかり捜していたよ。でも捜し出せて本当に嬉しかったよ。』

 これだけ聞かされるともうなかなか嫌とは言えない。駄目だったら副編の言葉のようにスッとやめればいい。

 ワタシはこの二人に自分を預けようと一大決心をした。また大きな曲がり角を曲がる怖いような感慨が胸にこみ上げた。

 最初の変身はやむにやまれぬワタシ自身の切なる願いから。今度の変身は他の人から切望されて。前から副編に引っ張られ、後ろから奥さんに押されて。

 この再度の秘かな変身の向こうに果たしてどんな景色が待ち受けているのだろうか…。

 ワタシには恐ろしいほどの大きな緊張こそあったけど、不安や心配は殆ど自覚しなかったの。お二人の強力な支えを戴いていたから。…ワタシって意外に度胸あるのかな?

 ワタシがB誌のビルから退出するのは周囲に人影が少なくなる深夜でなければならなかった。もう隠密行動!                〜続く〜


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55回 〜彩、大丈夫なの?〜

2005/12/17 07:41
 まだ別人間生まれ変わり作戦に賛成も同意もしていなかったのに、つい副編のペースに乗せられていたワタシ。

「多分じゃ心配だな。確かめてみるか。」副編は電話機を取り上げ誰かを呼び出し

『今から女の子と替わるからそいつの英語力を確かめてくれ。ニューヨーク帰りという実力があるかどうかだ。』
と話すと、ワタシに受話器を回してきた。

 受話器を取ると女性の声で流暢な英語が聞こえてきた。本格的な綺麗な発音だ。次々の問いかけにワタシが英語で答えると相手は「OK、副編と替わって。」という。

 副編はウンわかったと返事して受話器を置くとワタシに

『合格だ。三重丸だそうだ。声だけなら外人で通ると言ってたぞ。これで決まりだ。ニューヨーク帰りとするんだ。』

『日本語は一切わからないとしよう。だから化粧も衣服ももっとしっかりアクセントつけて向こうの感じを出すと!アクションももっとオーヴァーにしてさ。何もかも大変身だ!』

 副編は一人で盛り上がっている。

『今話した女が俺の奥さんだ。彼女ならメイクのことも衣装のことも全て任せておける。心配することはないよ。』

『絶対にわからないように別人に変身させてあげる。筋書きは俺と彼女とでキッチリさせるから大船に乗ったつもりで任せなさい。』

『最初はうちのB誌専属モデルで売り出そう。とにかく米国帰りの日系三世と言うことでどこまでも通すんだ。細かいことは一切ノーコメントでね。』

 副編はまた電話機を取り上げ「すまんが○○室に来てくれ。」と連絡すると「彩ちゃんが整形したことを知っているのはご両親のほかに誰かいるの?」と尋ねてきた。

 兄が二人とお医者だけと答えると、モデル勧誘の件を知っているのは?と聞く。友達二人と答えると「それ口止めが必要だね。」と。

 友達二人にはもう口止めがしてありますし、家族には必要ないと思いますと答えると、副編は

『そうか、一安心だね。整形後の顔を知っているのは大学の仲間だけか。バレる危険は大学だナ。そこを気をつけような。』

『衣装などの経費は全く心配しなくていいよ。全て会社持ちだ。彩ちゃんは給料を受け取るだけだ。売れ行きによってはびっくりする額になる可能性もあるよ。』
とすっかりワタシがOKしたような口調だ。

 ワタシは次第に心配になってきた。秘かな変身願望を巧みに刺激されて、いつの間にかその気になりかけている!オイ、オイ!彩、大丈夫なの!    〜続く〜


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54回 〜一大決心〜

2005/12/16 18:50
 講義などのない午後、ワタシはB誌を訪れ副編に面会を申し込んだ。もらっていた名刺を受付で示して。もしかしたら騙されているかもしれないという危惧をぬぐうためにも。

 ワタシは小室に通された。副編は本物だった。ワタシは試してみたたことを白状した。副編は笑い飛ばした。

 ワタシはプラスになるかどうかに引っかかっていることをぶっつけた。副編は言った。

『それは通り過ぎた後わかることだよ。プラスになるように頑張ることだ。君に言えることは君の類稀な素質を試してみるか見ないかにあると言うこと。僕はやってみる価値大だと思って勧めているんだ。』
と。

 ワタシは一大決心をして、秘密を守ってくれることを条件に、整形のことを白状し、旧知の人々に知られるのが嫌でもう一年間顔を見せていないことを告げた。

 だからこの顔をさらすことは死ぬより辛いと。副編はマジマジとワタシの顔を見つめていたが

『ウーン、これは難問だよ。そうか、そんなに変わっちゃったの?可愛くなりすぎて恥ずかしいのか。贅沢なことじゃの!』
と腕を組んでワタシの顔を見つめる。

『それにしても勿体ないな。そうか、そうか、もう一年も極秘作戦できたのか。で、どこまでこのまま行くつもり?まさか一生は無理だよな。そう遠くないうちに露見するのじゃないのかな。』

『ウーン、何かうまい方法はないかなあ。逆転の発想で打開策を考えるしかないか。こうなれば思い切って全く別人になってしまうのが最高の打開策だが…。』

『彩子ちゃんて言ったかな、その名前も出身地も何もかも変えてデビューするんだ。ウーン、メイクも衣装もガラリ変える。』

『整形で顔が変わってしまったのなら願ってもない絶好のチャンスだぞ。とにかく別人化作戦だよ。モデルの時だけの。普段は知らん顔で彩子に戻っているのだ。』 

 副編が一人でまくし立てていることは、ワタシの意識下にあり続ける変身願望をいたく刺激する内容だったの。デモね、いいお話には必ず落とし穴があるもの、用心、用心!

『ウーン、声や言葉は変えられんなあ。唖になるのも手だが、一寸なあ。何か外国語が堪能ならそこに生まれ育ったことに出来るんだが…。』

 この最後の部分は聞き逃せない。「ワタシ、英語なら大丈夫です。多分。」「日本語なしで英語だけで過ごせるか?」「やったことないけど、多分大丈夫です。」
                              〜続〜 
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53回 〜驚きの中身〜

2005/12/16 06:34
 その日の帰宅時、男は校門で待っていた。ワタシはこれまでの非礼を丁寧にわびて「お話をお聞きします。」と頭を下げた。

 男は自己紹介をして

『男前がよくないのでいつも初印象が悪く苦労していますよ。な〜あに、あなたが詫びることはない。もう慣れていますからね。』
と笑った。

 近くの喫茶店でのモデル勧誘話はワタシにとっては身震いするほどの驚きの中身だった。

 副編集長の話によるとワタシの素質はトップモデル間違いなしのものだそうだ。昨年途中一度見かけて手を尽くして捜したが、なかなか見つからずやっと昨日見つけたのだと。

『大学生活には迷惑かけないように責任を持ちます。あなたの素質には努力次第で怖いほどの将来性があります。これを生かしましょう。生かさない手はありませんよ。』

『大学生活とモデル業とを両立させるのは女優業や歌手業との両立よりずっとたやすいですよ。心配せずに僕に任せて下さい。無理だったらその時辞めればいい。』
と副編は言う。

 そして「返事は後でいい。納得いくまで何でも僕に聞いて下さい。」とも。ワタシはモデルと聞いて正直ブッとんだの。思いもしなかったことだら。

 ワタシには全く異次元のこと。縁もゆかりもないこと。任せてと言われたってどう考えていいのか…。

 ワタシはモデルをすることが自分にとって何かプラスになるのかどうなのか、それがまず気がかりだった。

 プラスにならないのならあんな人目に立つ晴れがましいことは自分には無縁だと考えた。

 そしてワタシは重大な問題点に気づいた。モデルになるとこの顔を天下にさらすことになる。それは困る。秘密がばれてしまうではないか。

 あれほど熱心に勧誘されたのに、それじゃどうにも応えられそうにない。ワタシは少し時間的余裕をもらって返答することにした。

 姉御にはモデル路上スカウトの件は報告し相談しなければならない。知られてしまっているのだから。

 翌日、キャンパスのベンチで姉御に相談した。何がプラスになるのか。姉御もこの問いかけにはさすがに絶句した。

 女性のあこがれの職業だと言うこと、有名になること、お金儲けになること。これ以外に答えは出てこない。

 これがプラスか?父さん母さんのお陰でお金には困っていない。有名になりたいなんて考えたこともない。

 姉御は急遽子鹿ちゃんも呼び出して、新しいワタシの部屋で相談することにした。新しい部屋を見てもらうことも兼ねて。

 しかし、三人寄っても文殊の知恵は生まれなかった。憧れの職業に就くことがプラスととらえるかどうかが判断の基準になることだけを確認しただけだった。
 
 ワタシは整形のことはどうしても言う気になれなかった。二人はとうとうワタシの狭いスペースで雑魚寝をして夜を明かした。          〜続く〜  



 その日の帰宅時、男は校門で待っていた。ワタシはこれまでの非礼を丁寧にわびて「お話をお聞きします。」と頭を下げた。

 男は自己紹介をして

『男前がよくないのでいつも初印象が悪く苦労していますよ。な〜あに、あなたが詫びることはない。もう慣れていますからね。』
と笑った。

 近くの喫茶店でのモデル勧誘話はワタシにとっては身震いするほどの驚きの中身だった。

 副編集長の話によるとワタシの素質はトップモデル間違いなしのものだそうだ。昨年途中一度見かけて手を尽くして捜したが、なかなか見つからずやっと昨日見つけたのだと。

『大学生活には迷惑かけないように責任を持ちます。あなたの素質には努力次第で怖いほどの将来性があります。これを生かしましょう。生かさない手はありませんよ。』

『大学生活とモデル業とを両立させるのは女優業や歌手業との両立よりずっとたやすいですよ。心配せずに僕に任せて下さい。無理だったらその時辞めればいい。』
と副編は言う。

 そして「返事は後でいい。納得いくまで何でも僕に聞いて下さい。」とも。ワタシはモデルと聞いて正直ブッとんだの。思いもしなかったことだら。

 ワタシには全く異次元のこと。縁もゆかりもないこと。任せてと言われたってどう考えていいのか…。

 ワタシはモデルをすることが自分にとって何かプラスになるのかどうなのか、それがまず気がかりだった。

 プラスにならないのならあんな人目に立つ晴れがましいことは自分には無縁だと考えた。

 そしてワタシは重大な問題点に気づいた。モデルになるとこの顔を天下にさらすことになる。それは困る。秘密がばれてしまうではないか。

 あれほど熱心に勧誘されたのに、それじゃどうにも応えられそうにない。ワタシは少し時間的余裕をもらって返答することにした。

 姉御にはモデル路上スカウトの件は報告し相談しなければならない。知られてしまっているのだから。

 翌日、キャンパスのベンチで姉御に相談した。何がプラスになるのか。姉御もこの問いかけにはさすがに絶句した。

 女性のあこがれの職業だと言うこと、有名になること、お金儲けになること。これ以外に答えは出てこない。

 これがプラスか?父さん母さんのお陰でお金には困っていない。有名になりたいなんて考えたこともない。

 姉御は急遽子鹿ちゃんも呼び出して、新しいワタシの部屋で相談することにした。新しい部屋を見てもらうことも兼ねて。

 しかし、三人寄っても文殊の知恵は生まれなかった。憧れの職業に就くことがプラスととらえるかどうかが判断の基準になることだけを確認しただけだった。
 
 ワタシは整形のことはどうしても言う気になれなかった。二人はとうとうワタシの狭いスペースで雑魚寝をして夜を明かした。          〜続く〜  

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52回 〜二回生の始まりは〜

2005/12/15 19:02
 大学二年の始まりはこうして風雲混じりで始まり、この後風雲は収まらなかった。風はすぐに吹いた。思いがけない方角から。

 新しい学期が始まってワタシはキャンパスとマンションの間を往復するだけの生活で心の平安を取り戻すべく努めていた。

 第一秘書からは度々、昼間だけでも来て欲しい、それが無理なら土日だけでもガイドに来て欲しいと矢の催促。でも、ワタシはなかなかいい返事が出来なかった。

 そんな生活の中で、ワタシはキャンパスからの帰り、見知らぬ中年男に呼び止められた。

 ワタシはいつものスケベ野郎だろうと相手にせず帰宅を急いだ。男から声をかけられるのは整形以降珍しくなかったけど、今回は時が時だけに…。

 マンションには専門書が待っている。こんな時こそしっかり読破せねば。ワタシはまっすぐに帰宅した。ところが声をかけた男はただのスケベ野郎ではなかった。

 最初の日にはマンションまでついてきてワタシが三階に上がっていくのを確かめ姿を消したけど、ただのスケベ野郎でなかったのは、翌朝ワタシが登校する時を狙って再び姿を現したこと。

 奴はワタシにモデルをやれと言う。言葉は丁寧だ。外見と大いに違う。でも、ワタシはまだ振り向かなかった。

 ナンパの手だと思ったの。よく噂に聞くナンパの手だから。ワタシは一言も相手にせずキャンパスにたどり着いた。

 そこを姉御に見つかった。姉御は男に抗議してキャンパスから追い出そうとした。

 ワタシは研究室へ急いだ。その後を追うようにして研究室に戻ってきた姉御が、興奮気味にワタシに一枚の名刺を差し出した。

『さっきの男、ストーカーじゃないぞ。私、名刺見てぶっ飛んじゃった!あいつB誌の副編集長だよ。あの有名なファッション誌の。わざわざ副編氏のお出ましだよ。一度会ってみな!心配なら私がついて行くよ。』

 姉御の言うことは絶対だ。最高の親友の言葉だ。男は怖いけど、もしもう一度同じ男に声をかけられたら話だけでも聞いてみようと決めた。      〜続く〜


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51回 〜引っ越し〜

2005/12/15 07:36
 突然の帰宅に父さんも母さんも驚いて、どうしたのか尋ねられた。無理もない。滅多ないことだから。それに、しおれたワタシの顔は隠せない。

 ワタシは父母を納得させねばならないし、しかし、あまり心配をかけてもいけないし、どこまでしゃべるべきか迷った。

 嘘も方便、苦肉の策。ワタシは第二秘書を独身から既婚者に変えて、ワタシを見初めて不倫の関係を迫ったので問題になってクビになったこと。

 私は決して色目など使ってないことなど弁解した。そんなわけだからもう泊まり勤務は止すことにしたと話した。

 アッ!しまった、泊まり勤務のことは内緒だったんだっけ。とんでもない失態!バレちゃった。父さんの沈黙が一寸怖かった。

 ワタシは懺悔のため一日父さん母さんの元で過ごし、その翌日の早朝こっそりと出かけた。母さんに見送られて。人目を避けて。

 目的はマンションかアパート捜し。出かける時、母さんが念を押した「安全第一!」を目安に捜すのだ。

 時間的に早すぎるのでどこかで時間つぶしをしなくてはならない。早く開店している喫茶店はないかと捜したけど生憎と見つからない。

 人通りもまだ少ないこの時間、目立つワタシがあちこちするのはまことに拙い。整形前のワタシだったら平気だったろうけど今はそうはいかない。

 それは嫌と言うほど知らされてたワタシだ。急いで決断しなければならない。ワタシが見つけたのはシティホテル。看板に『休憩』の文字があるの。

 受付には若い男性が一人いた。すっかり男性恐怖症のワタシだ。随分躊躇したけど背に腹は替えられない。

 勇気をふるって受付へ。…バストイレ付きのベッドルームでワタシはしばらくを専門書の読破に費やした。

 街に活気が出るとワタシはその中に出て女性専用の学生宿の空き室探しを始めた。さすがに大学のすぐそばには全くなかった。

 少しばかりはずれるとそれはあちこちに見つかった。一番の問題点の安全性を確かめてワタシは契約した。

 午後引っ越しトラックを雇って事務所から荷物を移した。事務所の私的スペースと比べるとかなり狭かったけど、ワタシには心休まるものがあった。

 事務所には第二秘書の姿もその私物もなかった。第三秘書が一人いたけど平素の陽気さとはうってかわって言葉少なだった。

 ワタシが荷物と共に去る時「昼間だけでも来てよ。」と殆ど哀願する口調でワタシに迫ってワタシはドキリとさせられた。平素の陽気さとあまりに違ってたから。男は怖いよ。クワバラ!クワバラ!

 春休みの残り一日は新しい部屋の整理に明け暮れた。夜になってもまだまだ整理は完了にほど遠かった。それほどにこの一年間に買い入れたものは多かったの。

 ワタシにとって革命的な年の始まりだったから。第一秘書の奥さんにはお世話になったお礼をかねて学生マンションへの入居を知らせておいた。                                      〜続く〜

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50回 〜嫌悪感と絶望感と〜

2005/12/14 19:14
 意気消沈しているワタシを奥さんはいろいろと慰めて下さった。それでもワタシは涙がこぼれて身体に力が入らなかった。

 迷惑をかけてはいけないと思いワタシは辞そうとしたけど、奥さんに強く止められた。

『あなたを帰したら主人に怒られるわ。だから主人が帰るまでは帰らないで!お願い。』

 奥さんにこう言われると帰るに帰れない。せっかく慣れた事務所勤めを辞めたくはない。でもこの状況下ではとても無理だ。ワタシは残念でならなかった。

 泣き続けるワタシを奥さんは励ますつもりでか「いいお服のウインドウショッピングに行きましょうよ。」と誘って下さった。

 奥さんは行動を始めると早い。赤ちゃんを近くのおばあちゃんに預けると渋るワタシを引っ張るようにバスへ。

 沈みっぱなしのワタシを元気づけようとしてか、奥さんは陽気に

『彩ちゃんと一緒に歩くの私大好きよ!みんなに注目されるでしょ。私が見られてるんじゃないことわかってても凄く快感!出来たら替わって欲しいわ。』
と。

 ワタシは奥さんの心遣いが有り難かった。でも自分の甘さでここまで事態を悪化させたように思えて、猛烈な嫌悪感と絶望感とで立ち直れそうになかった。

 ワタシは打ちのめされたまま奥さんとの一日を過ごした。途中奥さんは度々公衆電話で第一秘書と連絡を取っておられた。

「議員さんも事務所に来ているらしいよ。」「第二秘書が一切を認めているらしいよ。」「議員さんは彩ちゃんは絶対に辞めさせたくないと言ってるそうよ。」と逐一伝えて下さった。 

 奥さんの親切に応えるためにワタシは奥さんの見立てて下さる服に一応手を通した。

 ワタシが自分の持ち物の中で一番弱い靴についてアドバイスを求めたのは午後もだいぶ下がってからだった。心で泣いて、顔では楽しそうに…。辛かった。

 ワタシはこの後どうしたらいいかを考えながら奥さんの後に従った。出した結論は…今夜は遅くなってから父母の元へ帰ろう。そして明日、学校の近くに女子専用の学生マンションの空室を捜すこと。

 奥さんに勧められるままにワタシはまた第一秘書の自宅へ奥さんとともに帰った。

 赤ちゃんは自宅でおじいちゃんとおばあちゃんがお守りをしておられた。私はお二人に申し訳ありませんでしたとお詫びを言った。おばあちゃんは

『いいえ、あなたには平素から随分お世話になっているそうで、息子が喜んでいますよ。いつでもお困りの時には遠慮なくおいで下さい。』
と、ワタシのしおれた様子にかなり事情を察して下さっているようだ。

 定刻より少し遅れて第一秘書が帰宅してこられた。驚いたことに議員も一緒だった。議員はワタシに第二秘書のしたことをわびられた。

 今日、警察沙汰にしない代わりに今後一切事務所に出入りしない、彩子に近づかないことを条件に辞任させたこと、ワタシには是非続けて勤めて欲しいことを伝えられた。

 ワタシは泣けて泣けて仕方なかった。第一秘書によると第二秘書は「彩ちゃんガ好きで好きでたまらなくなっていたが、言い出せずついあのような行為に走ってしまった。本当に申し訳ない。」と謝っていたとか。

 ワタシは申し訳ないけどもうあの夜間勤務はとても出来ないことを申し上げた。あのスペースは今考えるだけでおぞましい空間となってしまったの。

 これに対して議員は昼間の許される時間だけでもいいから来て欲しいと言われた。これに第一秘書も是非お願い!と言葉を添えられた。土日のガイドだけでもいいとも。

 ワタシはとても即答は出来なかった。もっと落ち着いてから返事させて下さいとお願いしたの。

 引き留める第一秘書と奥さんを振り切るようにして、ワタシはその夜遅く辞し、父母の家に帰った。                    〜続く〜
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49回 〜震える手で〜

2005/12/14 07:15
 三泊目の早朝まだ薄暗い中を母さんに見送られてお家を後にした。前回と同じ行動パターンだ。

 今回違う所は事務所に着くと真っ先にビデオの点検にかかったこと。侵入者がなければビデオは動いていないはず。

 ドキドキの瞬間だった。巻き返しのボタンを押すとなんと動くの!ということは侵入者があったということ。

 ワタシは震える指で再生ボタンを押した。何かの間違いであって欲しいという気持ちに寄りすがりながらワタシは画面の点検をした。

 画面には一人の男が入ってきて、ワタシには正視できない行為を始めていた。男は部屋の中をぐるり見回すと、まっすぐに下着類の収納場所に近づき躊躇なくそれをあけた。

 勝手知った行動だ。男は第二秘書に間違いない。男はパンティを物色し、奥の方から例のセクシーなのを取り出した。

 一度その臭いを嗅ぎ次いで極薄のキャシミールを取りだした。男はこれも臭いを嗅いでいたけど、何を思ったか辺りを見回して自分の着衣を脱ぎ始めたの。

 全身裸になると男はなんとセクシーパンティとキャシミールを身に着け始めたの。ワタシはすんでのところで失神するところだった。

 男はその格好で今度はワタシの写真の収めてある引き出しを開けワタシの写真を取りだした様子。これも全く勝手知ったる行動なの。

 男はもう一枚パンティを取り出すと、それを前に横になって着けているセクシーパンティを少し下げワタシの写真を見ながら何か始めた。

 ワタシには何をしているのかわからなかった。やがて男は前方に崩れしばらく動かなかった。

 その後男はパンティを丸め、後を全て片づけると丸めたパンティを持って出て行って画面は消えた。

 ワタシは息を殺して見終わってどうしたらいいか途方に暮れた。何はともあれ思い直して、下着類を調べ、男が身につけたキャシミールとパンティを取り出した。

 キャシミールには大きなシミが出来ていた。この二つをゴミ袋に入れると、どうしたらいいかを思案した。

 相談できる人は誰か。男性にはとてもこんなことは相談できない。とすれば…相談できる人は第一秘書の奥さんしかない。

 ワタシはゴミ袋をゴミ捨て場に出すと問題のテープを持って第一秘書の家に向かった。朝食などどこかへ吹っ飛んでいた。

 第一秘書はワタシの朝早い訪問に驚かれたご様子だったけど、ワタシの青ざめた顔に気づき急いで招じ入れて下さった。

 ワタシは奥さんに「ご相談があります。」とお願いし、奥さんに事情を初めからお話しした。辞意も伝えた。

 奥さんは私の話を聞きテープを見ると深刻な表情だったけど、とにかく夫に相談してみるからそれまで私に任せて!とおっしゃった。

 ワタシの泣き顔を見て出勤を遅らせておられた第一秘書は奥さんから説明を聞きテープを見て

『申し訳ない。第二秘書は即クビだ。彩ちゃんは何も悪くない。悪くない彩ちゃんを辞めさせて第二秘書をそのままにしておくことは出来るはずがない。』

『彩ちゃん、辞めないでおくれ!議員も彩ちゃんは大層お気に入りなんだ。今日は妻と一緒にいてくれ。第二秘書の方は今日中に処分する。』
と頭を下げて出勤して行かれた。

 出かける時汚された下着の廃棄場所を確かめられて。ワタシは自分の辞意を伝え第二秘書を辞めさせないで下さいと再度お願いした。         〜続く〜

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48回 〜間違いない!しかし〜

2005/12/13 21:33
 三月からの休みも基本的には今までの休みと同じ送り方だった。事務所を離れたのは仲間との一泊旅行の二日間と、父母の元に帰った三泊二日の計四日間だけ。

 ワタシには、仲間との旅二日間の内初日の一日目は部屋の隠し撮りのセットが可能だったけど、二日目は不可能だった。

 その初日の記録には異常はなかった。しかし、部屋には明らかに異常が見えた。今回は古いブリーフこそなかったけど、使用中の最も新しいパンティだけが姿を消していた。

 留守の二日目の日曜日に盗まれたと見るべきだった。その日の当番秘書は第二秘書だ。ワタシはショックに打ちのめされた。間違いない!しかし、まだ動かぬ証拠はない。

 ワタシは父母の元に帰る前に嫌ではあったけど二人の騎士を人影の少なくなったキャンパス内に呼び出し、留守にする場合の方法はないものかを相談してみた。

 三泊二日の七十一時間の全記録だ。二人は頭を抱えた。結局リース屋に行ってみることに。

 少々出費は高くつくけど赤外線に反応して写すという機器を借りることにし、また深夜二人でセットに来てもらうことにした。

 ワタシの部屋に人間が入るとその体温に反応してビデオが回る仕組みだ。試しに動かしてみたら深夜には僅かに駆動音が気になったけど昼間は大丈夫と判断した。

 ワタシはこれをセットして父母の元へ夜遅く人目を避けて帰った。母さんには元気な姿をしっかり見てもらわねばならない。

 三泊二日の間、夜間は両親と遅くまでしゃべった。しゃべることはいくらでもあった。昼間は一歩も外に出ず専門書を読みふけった。       〜続く〜
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47回 一泊の旅で〜

2005/12/13 07:29
 学年末のテストも済みキャンパスは一気に休暇ムードに向かっていた。姉御によるとグループでは休みに一泊旅行を計画しているらしい。

「ワタシも連れてって!」と頼むと、姉御は荷物係に連れて行ってあげるという。そして笑いながら「嘘よ。皆あなたと行くことを楽しみにしているわ。私もよ。」と。 

 旅行は富士の周辺だった。忍野に一泊した。皆が私と一緒に行きたいわけがその夜わかった。

 浴場で皆は全裸のワタシの身体を珍しそうに眺め、お尻を撫でウエストを触り喧々囂々。やはりその細さと肌の秘密が限りなく皆を惹きつけていたの。

 長い手も脚も大いに羨ましがられた。それに身体のラインも。最も皆をうならせたのは全身の肌の白さ。「彩の身体には白人の血がはいってんじゃないの?」という疑問も出たほど。

 ワタシが持参した米糠袋は皆が試用するのでなかなか私が使うことにはならなかった。

 夕食後はまたダイエット法や肌の手入れ方を根掘り葉掘り質問攻めにあった。それがあまりに古典的な方法なので、皆今夜も半信半疑の様子だった。

 春まだ浅き忍野は全て霜枯れして寒々としていたけど、ジーパンの上下に薄いブルーのつば広帽子を少し斜めにかぶり、同じ薄いブルーのUVカットのトンボメガネをかけたワタシをはじめ、八人の女子学生の周囲は一足早い春の気配だった。

 澄んだ地下水が豊かに湧き出す大池のそばの店々に、観光客に混じって八人はお土産ウオッチングに熱中していた。

 ワタシは新入りなのでごく控えめに皆の後ろをついて回った。と、仲間の一人が「おい、おい、周りのみんながこっちを見ているよ。さっきからずっとだゾ。」と仲間に注意を促した。

 八人がそれとなく周囲に注意を払ってみると、たしかにグループがずっと注目を浴びているらしい。

 八人は素知らぬ顔でお店の外に集合。皆で原因を考え合った。その相談中もわざわざお店から出てこちらを見ている人が見られ、皆は頭をひねった。

 その多くは女子高校生らしかった。原因がよくわからないので一寸場所を変えてみようということになり、ぞろぞろと離れたお店に移動した。

 その途中でもグループは注目されていることがわかり、八人はそれまでの一塊りからバラバラと自由に離合集散を繰り返してウオッチングを楽しんだ。

 そのうちに騒動の原因がわかってきたの。私が一人で橋の上から池の中のマスの泳ぐ姿を覗き始めると、女子高生の一団が押しかけ写真に一緒に写ってくれという。

 それがきっかけで続々と女子高生の群れが押し寄せてきた。ワタシと写真に収まりたくて。一体どうなっちゃったの?こんな経験は初めて!

 そのうち女子高生に囲まれた原因もわかった。最後の二人がワタシに「何組ですか?」と問いかけてきたの。

 ワタシは「…?」二人組は「宝塚でしょ?」と。今度はワタシが「…?」ここでやっとわかったのだけど、こともあろうに宝塚のスターに間違えられていたの。

 ワタシは吹き出して「違う、違う!ただの大学生よ。」というと今度は相手が「…?」

 これを皆に報告すると、皆大笑い。「ヘプバーン宝塚に現る!だよ。」「ペチャパイヘプバーン女子校生に取り囲まる!がいいよ。」と賑やか。

 こんな具合でこの後のワタシは皆に奢らされる羽目に。この気のおけないいい友をワタシは忘れない。この旅は大学一年の最後を飾るに相応しいものになったの。
                             〜続く〜
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46回 〜学年の終わりが近づき〜

2005/12/12 19:07
 キャンパスでは学年の最後が近づき、ワタシは姉御と一緒の行動が多くなっていた。

 しばしばそれに子鹿ちゃんが合流した。姉御がいると女子学生の親衛隊は遠慮してか姿を消し、男子の取り巻きは遠くから眺めているだけ。

 ワタシにとっては至極心地よい状況だった。ワタシの寸暇を惜しんでの専門書読破の様子に、姉御はいたく心を打たれたようで、私も真似てみようと読み始めた。

 時には二人で討論もした。読むべき本の選択も二人で話し合った。二人でそのうちゼミを完全制覇してみたいねと笑いあった。

 この様子を見て親衛隊以外の女子学生が一人二人と話しかけるようになり、姉御によってたちまち彼女らはうち解ける間柄に引き込まれた。

 質の高い仲間だった。親衛隊がいかにミーチャンハーチャンだったか。その子たちは一つのグループとなって遠のいた存在となった。

 男の取り巻きグループは姉御の一睨みで退散。それが二三度続くと、しばらく続いたワタシの周囲の喧噪は消えた。ワタシは姉御に感謝した。

 そのことを姉御にいうと姉御は「ナーンダ、彩子はあれを楽しんでいたと思っていたけど、違ったの?」と意外なことをいう。

 ワタシは周囲からそんな見方をされていたのかと衝撃を受けた。「違うわよ。ホント困ってたんだから。」

「そう?でも、ちっとも困ったっていう様子は見えなかったよ。いつも意気揚々と胸を張ってた、ない胸をね。あらゴメン!」          〜続く〜
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45回 〜二十歳の新年、そして?〜

2005/12/12 12:08
 四日の朝早くまだ誰も起き出さない時刻にワタシは父母の家を出た。顔見知りの人に顔を合わせることなくワタシは事務所の自室にたどり着いた。

 母さんから持たされた物を置き、トレパンをジーパンに着替えると、ワタシは近所の喫茶店にモーニングを食べにいった。こうしてワタシの二十歳の新しい年は始まった。

 部屋で事務所用の衣服に着替えようとしてワタシは初めて異常に気づいた。どこか違う!慌ててワタシはパンティを調べた。明らかにワタシの納め方と違う!微妙に。

 一番奥の例のセクシーなパンティを点検してワタシははひっくり返った。なぜって、二枚のフリルパンティの間に見たこともない男性用の使い古したブリーフが収まっているではないか。

 ワタシは目の前が真っ白になった。変態男が侵入したのは間違いない。古ブリーフが動かぬ証拠だ。

 どうしたらいいの。ワタシは事務所に降り立っても頭の中はそればかり。仕事をしながらワタシがたどり着いた結論は、隠し撮りだった。

 なるべくそれは選択したくないものだったけど、いくら考えても動かぬ証拠となれば他に方法は思いつかなかったの。

 あの二人にはもう関わりたくないと思ったけど仕方ない。二人は大喜びで指定した深夜に機材を持ってやってきた。

 作戦は隠密裏に進めなければならない。三人以外に漏れたら失敗となる。そのことは事前に二人にも釘を刺しておいた。

 下着の収納場所を中心に撮るように、隠しカメラの設置に二人は悪戦苦闘。二人は喧嘩をしながらも何とか外が白む前に終えて帰って行った。

 それからは毎夜テープの点検をした。毎日何も写っていないテープだった。その後、キャンパスでは私が嫌だなと思っていたことが現実となっていた。

 というのはあの二人の騎士たちにワタシに毎日超接近する口実を与えることになっていたの。

 二人は毎日のようにワタシに特別に秘密な話があるかのような格好で近づいてきた。そしてなかなか離れようとしない。

 たまらなくなってワタシはとうとう「異常があったらワタシから言うからほっといて!」と言わなければならなかった。             〜続く〜
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44回 〜クリスマスの後に〜

2005/12/11 19:08
 クリスマスの翌日、教習所の友、美千から皆が会いたがっていると電話してきた。喫茶店で三人にあった。

 八月末以来の再会だ。やっぱり懐かしい顔だ。美千はそれほど変わりなかったけど、他の二人は努力の跡ありありだった。

 ニキビが随分姿を消している。体重も落ちてきているという。たしかに印象が違う。ワタシは彼女らを祝福した。

 努力点を二三確認して、また来年の夏の再会を約して別れた。ワタシは彼女らのカリスマとなったみたい。

 
 年末三十日の夜暗くなってワタシは父母の元に帰省した。翌大晦日を手伝うために。母の手伝いだ。そのためワタシはトレパン姿で帰った。父母は喜んでくれた。

 二人の兄は大晦日の夕べ帰ってきた。上の兄はワタシの顔を見てオヤッ?という表情を見せただけだったけど、下の兄はワタシの顔を見るなり「ワッ脅かすな。気持ち悪い!」と逃げていった。けしからん。
 
 二人の兄は最近ワタシによい顔を見せない。その原因は妹のワタシに背丈を抜かれたことにありそうだ。

 三が日をワタシは母さんべったりに過ごした。よその人が来たらワタシは奥に逃れて顔を見られないようにした。                 〜続く〜
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43回 〜関心の的の〜

2005/12/11 17:19
すると、姉御が横やり。「質問ある人はしなさーい!」…一番聞きたいことから聞こうと言うことか。

 最初の質問は「体重とスリーサイズ?」だ。ワタシの場合一番関心を持たれるのはいつも身長と体重。

 ワタシは体重については答えられたけど、その他については正確には知らない。スリーサイズに至っては測ったこともない。

 それを白状すると「ヨッシャ、測れ!」の姉御の一声。キャァキャァ楽しそうにみんなはワタシを保健室に連れ込んだ。

 身長計にワタシを立たせた皆は「ヒエッー!それにしても高いねえ、まるで電柱!」「デンチュウ?…アッ、電柱か!電柱は電柱でも色っぽい電柱だぞ!」

「フフッ、こんな悩ましいラインの電柱が街角にあちこち立ってたら男は皆狂っちゃうよ!」「バカ、変なこといわないの!」

 騒動の中で測るのだけど…背が足らずそのままでは誰も正確には測れない。

「でも脚線美はさすが。なぜジーパンなんかで出し惜しみするのかな。」と改めて感嘆しきり。それにしても平素のワタシのことを皆よく知ってる?

 身長はやはり恐怖の数字だ。スリーサイズの測定は皆のキャァキャァワァワァの歓声の中で行われた。裸にされた私は寒さに思わず、ブルッ。

 結果は皆を喜ばせた。「このバストって小学四五年生クラスよ!」「いいの、そのうち出てくるから心配してないわ。」

「彩の肌とバストはまだ子供のママなんだよ。思春期のトラブルくぐってないからツルツルのペッタンコ!他の所はしっかり青春してるのにね。」

「ヒップは見かけよりずっと大きいね。背の高さにバランスしてるんだ。立派!それにしてもいいラインね。贅肉がゼロだからなあ。」

 皆はワタシのペッタンコパイ、細いウエスト、それに見事な細い手足に「よくこんな細さで生きてられるよ!」と今度は心配顔。すると姉御は

『ヘプバーンのヴァイタリティ知らないか。その身体で取り巻き引き連れて講義もゼミもちっともへこたれないんだ。誰か代わりになってみな。二日も持たないよ。』
とワタシの肩を持ってくれた。

『どうしたらこんなもち肌保てるの?」皆はワタシのバストをヒップをウエストを計り直しながらワタシの肌を不思議がった。

 こうなるとその後の質問は二つに集中。一つは太らない秘訣。もう一つはきれいな肌を保つ秘訣だ。後半はもうワタシを中心にした美容の総合研修の体だった。

 痩身のための漢方薬の常用にもみんな驚いたけど、ワタシが入浴の時米糠袋を常用しているというと皆手をたたいて喜んだ。

 ヘプバーンの印象とかけ離れすぎていて笑わせると。深夜を過ぎていたけど、皆大いに満足してお開きに。                 〜続く〜
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42回 〜クリスマスイヴに〜

2005/12/10 19:21
 クリスマスイヴには姉御から「私たちの仲間の集いがあるが来る気があるか。支障がなかったら来たら。」という誘いを受けた。

 思いがけないことでワタシは驚喜の思い。是非参加させて!とお願いした。姉御は「正装しておいで!」と言ってきた。

 場所は私立高校の音楽室だった。子鹿ちゃんの母校だそうだ。ワタシは成人式用にと母さんから贈られて未だ袖を通していないドレッシイな洋服を着て出かけた。

 夜だから帽子もメガネもいらない。ワタシは長い黒髪を美容院でまき直してもらってオシャレにきめて出かけた。

 初めて淡紅のネックレスもきめて。これはワタシの白い肌によく似合うと思うの。

 ワタシを含めて八人の女子学生が集まった。初めに姉御が私を紹介してくれた。

『皆さん、既にご案内の我が校のヘプバーンです。本人の切望で今日から我がグループの会員見習いになります。いい案配に取り回してやってちょうだい。』

 続いて会員の自己紹介。その中の一人が「猛者揃いの中にまた異色の猛者が加わったのね。今後が楽しみ!」と言った。ワタシが猛者だなんて?

 ワタシの膝上のスカート姿は大好評だった。これ実は夜しか着れない物なんだけど。UVがやばくて。

『ホント、ため息の出る脚してるねえ。それに帽子もメガネのないヘプバーンもいいね。』

『サングラスなしのヘプバーンなんて滅多に見られないよ。よく見ときな。』
これは姉御の言葉。

 七人の中にヴァイオリンを持参している子がいた。自己紹介によると芸大に通っていると。

 その子のヴァイオリンと子鹿ちゃんのピアノとでクリスマスソングが演奏されみんなで歌った。

 どうやらその芸大生を励ますのがこの会の成立源らしい。中学や高校での繋がりで結ばれたものだそうだ。

 会の流れからして姉御と子鹿ちゃんが仕切っていることは明白だった。その姉御が

『只今からヘプバーンの体験的美容術についての特別講義があります!』
とワタシに断りもなく会を進行させる。

 ワタシは驚いたけど、みんなは興味津々らしい。こうなればしゃべるしかない。ワタシは自分がいつもキャンパスではスッピンだということから語り始めた。
                           〜続く〜
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41回 〜新しい友と〜

2005/12/10 12:16
 大学が休みに入った最初の日曜日、ワタシは第一秘書の許しを得て自室に姉御と子鹿ちゃんを招いた。

 ワタシの衣服を全て子鹿ちゃんに見ておいてもらうためだ。姉御も子鹿ちゃんもワタシの部屋で大いにくつろいでくれた。

 この時ワタシは子鹿ちゃんがピアノにも長じていることを知った。大学への進学でピアノ科かデザイン科か迷ったことを聞かされた。

 大変な才能なんだ。ワタシはそういう才能と友達になれた幸運を感謝した。

 私たちは子鹿ちゃんに案内されて有力なデパートの高級女性服売場を回った。姉御も滅多こんな専門店には足は向かないのだけどと言いながら楽しそうだった。

 子鹿ちゃんはワタシの物だけでなく姉御のも自分のも目を通していた。なるほど彼女が選び出すものは姉御の難しい体つきを上手に克服していい選択をしていた。

 ただし、なかなか価格もよかった。姉御は大変参考になると言いながら、私がこんなところで買うのは十年も二十年も早いと笑っていた。

 ワタシは子鹿ちゃんが見立ててくれた物の中から自分の持ち物にない傾向の物を選んだ。

 ジーンズの専門店にも立ち寄った。店員がワタシの身体を見るとすぐに取り出してくれた物があった。「ちょうどいいのがあります。」と。

 ワタシがそれを試着してみると二人が歓声を上げた。「かっこいいよ!」「脚の長さが凄い!」

 フォーマルな物ばかりでなくこんなのも混ぜるといいと子鹿ちゃん。ワタシは即断。格安。これはいい、今後常用だ。

 帽子専門店も回った。子鹿ちゃんの推薦で今日購入の服に似合う物を買った。ここでは子鹿ちゃんも買った。

 靴売り場にも行った。ここではワタシのほかに姉御も買った。ワタシは子鹿ちゃんに毎月一度は是非助けてとお願いした。

 子鹿ちゃんは「A大のヘプバーンの頼みだから断れないよね。」と姉御を見て笑った。二人の仲は相当な親密さが伺えた。ワタシもこの仲間に加えてもらうぞ。                           〜続く〜
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40回 〜知らぬ内に〜

2005/12/10 07:49
 その年の最後の講義の日、ワタシはゼミの教授から呼び出しを受けて何事?といぶかりながら教官室に出向いたの。

 ガイダンス教授とは別の教授からこういう風に呼び出しを受けて個人的にお会いするのは初めてだ。

 とても緊張して入室すると、教授は笑顔で椅子を勧めて下さりながらおっしゃった。

『わざわざおいで戴いてすみませんね。じつはですね、研究室でゼミの発言の分析を進めているのですが、あなたの発言になかなか興味深いパターンがあることを研究生が発見しましてね。』

『今まではゼミでのあなたの最近の勝利はあなたの読書の勝利と、併せてあなたの人柄の滲んだ優しい言葉遣いの勝利と見ていました。』

『あなたの言葉は控えめながら、女性らしい優しさと柔らかさが聞くものの耳に実に心地よい。つい引き込まれて聞かされる。特に男性は。』

『この声そのものの響きの佳さに加えて、使い方も誠に素晴らしい佳さがある。その豊富な語彙に加えて、専門書の読書に裏打ちされた正確な知識とで、いつもあなたは勝利を収めていると見ていました。』

『ところが、一概にそれとばかりは言えない秘密を見つけたわけで、そのことを直にご本人からお聞きしたくておいで戴いた次第です。』

『その秘密とは、あなたは討論では決して対決しないのですね。まず相手の意見をよくよくお聞きになる。』

『その上で、相手を満足させた上で、ご自分の意見を述べられる。対決しないでいつの間にか相手を自分のペースに引き込み、そして勝ちを収められる。』

『そのあなたの見事な女性らしい討議の仕方を、いい見本に記録させていただきますよ。』

『それにしても、最初の時間には後回しにせねばならなかったほどのアヤヤ君が今ではゼミトップの論客に変貌されたのだから、その努力は賞賛に値しますナ。』

『そうそう、エクセルでのあなたの技能は見事でしたね。ワードはともかくエクセルであれほどの技能を持つ女子学生は珍しい。』

『最初の頃あなたに挑戦していた数人の男子学生もすぐに負けを認めましたからね。習っておられたのですか?』

『はい、小さい時から習っていました。』

 このパソコンの習い事は自宅に講師を迎えての自宅学習だった。このほかにも自宅学習は数々ある。全て母さんの愛。嫌な思いを少しでもさせたくないという。

『今回のゼミは珍しいスターの出現で滅多にない活気あるものになりました。ゼミを引っ張って下さったお礼も併せて付け加えさせて下さいね。』 

 教授に言葉の美しさを褒められワタシは嬉しかった。けれど、しかし随分違和感はあったの。そんなにお褒めを戴く資格があるのかって…。

 殆どしゃべることの無かったワタシがゼミなどと言う公的な場面でしゃべる必要が生じて、ワタシはことのほか発音や言葉遣いに注意を払った。

 努めて穏やかに丁寧に話すことに努めたつもりだ。これがワタシの口癖になるといいと思いながら。事務所の備品の小型録音機で声を録音して練習も繰り返した。

 ワタシは勧められたお茶を戴きながら教授のお話をお聞きした。自分の発言形式にそんなパターンがあるとはこの時初めて知った。

 意識しているのですかという教授の問に特に意識した結果ではないことを申し上げた。言葉や話し方には注意を払い続けていたけども、発言形式など考えも及ばなかった。

 この時、私の心には母さんの顔が浮かんでいた。反対したくなっても決してすぐに反対してはならないのよ。相手の意見も十分に敬意を払ってからにするのよ。といつも口癖だった母の顔。

 それにしても教授へのお答え、あまりにも素っ気なかったかな。あのときの教授のお顔には明らかにオヤ?という表情があったっけ。

「母さんの影響でしょう。」と言うべきだったなあ。せっかくお呼びいただいたのに申し訳ありません。ワタシ、まだまだ修養不足! 
 
 知らないうちにすっかり母さん色に染まっているんだなあ。ワタシの意識しない所にも母さんの好ましい色がいっぱい潜んでいて欲しいよ。…母さん、これからも宜しく!                       〜続く〜

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39回 〜十人の親衛隊よりも〜

2005/12/09 22:10
 秋、ワタシは二十歳となった。ワタシの女子親衛隊は他の学部からも一人また二人と加わり、最初二人だけだったのが数人となっていた。

 しかし、ワタシは十人の親衛隊よりも一人の対等の精神を持つ親友の方が欲しかった。そばにいるだけの親衛隊に飽き足らなくなった私の心の変化だった。

 ワタシは入れ替わり立ち替わり現れる女子親衛隊の中からその真の親友が現れるのを根気よく待った。勿論待つだけでなく働きかけも怠らなかった。

 ワタシが試みたきっかけは二つ。絶えず講義やゼミの中から深めたいテーマを持つように努め、それを共に考えてくれるように持ちかけたのがその一つ。

 もう一つは服飾についての相談を持ちかけたもの。当然相手にはねらいをつけて。

 この結果の第一段はよかった。その相手は予期しなかったことを喜んだ。でも、ここでよしとしては駄目なの。

 すぐに第二の矢を放って相手をこちらへ引き込まねばなんにもならない。すなわちこちらが真剣に答えを求めていることを知らせるの。これがカギ!

 しかし、親衛隊のみんなはワタシを対等な相手とは見てくれないの。なんというか、憧れるばかりで。

 それに気づいてのワタシの打った手だったのに、予想に反して効果を上げず、女子親衛隊はそれ以上には対等な親友には脱皮してくれずワタシは悲しかった。

 一度生じた従属感情は容易に払拭できないのか。親衛隊の中には教習所の美千は一人もいないのか。

 いつしかワタシは親衛隊の中から親友を見つけることを断念し、別な周辺に目を向けていた。

 気をつけてみると、ワタシに特別な感情を持つことなく独立している女子学生も何人もいた。

 ワタシが最初に目をつけたのは、その中で体格がよく男子学生にも対等以上に接している姉御タイプの学生だった。

 この子に講義やゼミでの疑問をぶっつけてみた。期待は予想以上だった。それ以後彼女はワタシの貴重な論友となった。全く対等な。嬉しかった。

 二人目の真の友はその姉御によってもたらされた。ワタシが姉御に秋の装いについて助言を求めたのに対して、彼女は豪傑笑いで一蹴し

『それならいい子紹介してあげる!』
と連れてきたのが小柄な見知らぬ子。

 見知らぬのは当然、別の学科の子だった。姉御の紹介の言によると服飾には一家言あるという。「頼りになるよ。」と。

 小柄で華奢なその子は生き生きとした表情の持ち主で、まるで子鹿のような印象を与える所があった。

 名字の鹿野の鹿をとってワタシは彼女を子鹿ちゃんと名付けた。子鹿ちゃんはワタシの願いを快く了承してくれた。

 子鹿ちゃんの話によると、姉御のエネルギーは大したものだそうで、そのネットワークは男女の別なく学科の枠を超えて広がりつつあると言う。

 そういう親友が二人も誕生してワタシの周りが充実し、その年の暮れが迫っていた。

 その中で一つの噂がワタシを悲しませた。あの由子が退学したという風の噂だった。恋人に裏切られての傷心の退学らしかった。産婦人科通院の噂の付録も付けて。                             〜続く〜
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38回 〜残暑の終わる頃〜

2005/12/09 18:59
 夏休みに続いて図書館の本の研究は精力的に続けた。講義やゼミの理解を深めるために役立つかもしれないと。

 講義が始まる前の時間も惜しんだ。ワタシが席を取るとその周囲は忽ち男子学生によって埋まる。いつものことだ。

 煩わしいのでワタシはいつも窓際か最前列の中央に座った。窓際は単純に煩わしさが半分になるし、最前列は同じく半分になると同時に教授のお話がよく聞こえる最もいい席なの。これ新発見。

 その後ワタシは努めて早めに移動してその最前列の席を狙ったもの。そしてワタシは男たちを無視して本を開く。

 誰が何を言おうと知らんぷりで読んでいく。引っかかる所に出くわすと手帳にページを記す。これ、帰ってコンピューターに取り込むの。

 自慢じゃないけどワタシは熱中すると極度の集中が出来る。男どもを無視するのは当たり前としても、教授が入室されたのにも気づかない時が度々あったほど。

 残暑の季節、ワタシの周囲には男子学生の取り巻きが数人入れ替わり立ち替わり群がるのは変わらなかった。

 けど、女子学生の数も少し増加して親密度が増してきていた。ワタシが群がる男子には適当なあしらいしか見せないのに対して、女子には細かい心配りを忘れなかったからか。

 女の友達が欲しいワタシの心がそうさせたのだ。こんな訳で常時二三人の女子学生が私の周辺にいてくれた。有り難かった。

 この子たちがいなくて周りが全て男子ばかりだったらと考えると、ワタシは大切にしなくてはと思うのだった。

 残暑の季節が終わろうとする頃、キャンパス内での私の評価は変わってきたらしかった。

 その一つは、時間さえあればどこでも読書に集中する姿が高い評価を得てきているらしい。女子親衛隊の一人の言葉がそれを示していた。

「彩のは読んでる本がいつも凄いんだ!尊敬ものよ。」そう、ワタシはいつも研究室や図書館の専門書を借りている。徹底して充実に努めている。

 コンピューターにも相当なコピーが蓄積された。嬉しい。ワタシの凝り性の勝利が続いている。

 加えて講義やゼミでのワタシのまっすぐな取り組みの姿勢が周囲に強い印象を与えているらしい。とにかく今は充実を期す時!

 もう一つはワタシの服飾についての評価。色彩鮮やかなロングパンツにしゃれたシャツ姿、それに濃い色の幅広の帽子を少し斜めにかぶった私のトンボメガネ姿は、A大のヘプバーンというあだ名がどこからか生まれたらしい。

 しかし、変なヘプバーンではあった。右手にはいつも色の濃い晴雨兼用の日傘を持ち、左肩には本などの入った大型バッグ。

 いつからか小さなイヤリングが控えめに加わり、時にはブローチやネックレスが加わって可憐さに花を添えてはいたけど、それらはとにかく控えめだった。 

 A大のヘプバーンのあだ名は大学の学生部の広報紙の取材で知った。「あなたのことA大のヘプバーンと呼ばれているの知っていますか?あなたのスタイルが原因らしいのですが、秘訣は?」

 この時、広報紙にワタシの写真と痩身術とが掲載された。でも、ヘプバーンとは随分無理がある。あんな美女の足元にも及ばないヨ。             〜続く〜 
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37回 〜夏休みの終わりに〜

2005/12/09 14:58
 夏休みが終わる日の夜、ワタシは両親の元へ元気な顔を見せに帰った。暗くなって。近所の人にこの顔を見られるのは恥ずかしいから。

 両親に近況を話して感謝の気持ちを伝えた。代議士事務所の件も白状した。父さんは怒るかと思ったけど「そうか。そうか。」と頷くだけだった。

 兄二人は遂に夏には帰ってこなかったらしい。その父さんがポツリと言った。「彩、男には気をつけるのだよ。」

 それを受けて母さんも「わかっていると思うけど以前の彩とは違うのよ。用心しすぎるくらいでもいいの。」と心配げだ。

 母さんにそっとお風呂場で聞いてみると「おまえが随分あか抜けして綺麗になっているので、父さん心配なのよ。」という。

 そうか、父さんにはこの新しい顔まだ十分には見せていなかったんだ。ごめん、父さん。

 ワタシは母さんの元へ何枚かの写真を残しておいた。事務所の私室での友達三人とのセルフタイマーでの一枚。

 それにゼミ一同での一泊旅行での数枚。大勢の男子学生との集合写真だけど、隣にはいつも女子学生の取り巻きの二人がワタシをガードするように写っていた。

 もしくはゼミ担当の教授の隣だった。教授は私を隣に呼ばれることが多かった。宿舎での夕食の時も私は教授の隣に座らされた。誰も文句を言う者はいなかった。

 夏休み後のキャンパスは変わりなく始まった。ワタシは教習所の経験から極薄のロングパンツとシャツの取り合わせを考えた。

 スカートは紫外線に全く無防備だ。プデックを訪れたけど思うようなのがない。仕方なく仕立てることにした。

 色は白といきたいところだけどこれはUVカットには不向き。色つきだ。それも濃いほどいい。パンツは無地がいい。無地の美しい色合いのを細身に数種仕立てた。

 プデックのデザイナーさんは私の希望を聞いて大層関心を持ってくれた。ワタシが裾を広げたりストレートにしたり絞ったりといろいろ欲しいといったのが彼女のデザイナー心をとらえたのだろう。

 価格も大変サービスしていただいた。有り難かった。シャツは市販ので間に合う。これは模様も色も楽しめる。でも取り合わせは全てプデック任せ。

 忘れてた親衛隊が初日から復活だ。三回生の騎士が不服そうに言ってきた。

『隠し撮りのことどうして俺に相談してくれなかったの?あいつには無理だよ。それにさ、あいつ一人を部屋に入れたのは拙いよ。気をつけなくちゃ。』

 口止めしたのに二回生はしゃべってる!けしからん。前回は二回生の騎士に文句を言われた。今回は三回生にだ。お互いに張り合っている!

 三回生は「リースで安く借りれるからいつでも言って。」とも言う。次は二人一緒に頼もう。

 ワタシの細いロングパンツは受けた。取り巻きの女子学生が反響を伝えてくれる。背が高くスリムな所を上手に生かしている。美しい色が素敵!等々。

 もう一つ評判になっていたのはウエストの細さとヒップのかっこよさ。これには誰もが感嘆の声を上げていると。

 これはワタシにとっては予想外のこと。パンツできちっとウエストを締めているので、その細さがいやが上にも強調された感はあるのだけど。

 …しかし、薄地とはいってもロングパンツで夏の屋外を歩くは酷そのもの。ホント、やせ我慢!                         〜続く〜
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36回 〜ヘルスセンターにて〜

2005/12/09 07:56
 終わる頃二人がワタシの身体を参考に見たいと言い出した。ワタシはあっけにとられた。全身の裸が見たいというの。

 色白で背が高くて華奢で優しい体つきなのに、一本シャキッと芯が通っているワタシの身体が不思議で仕方ないのだそうだ。

 ワタシは「じゃ、みんなでヘルスセンターへ行こうよ。」と提案した。それを聞いた美千が吹き出しながら「ヤダー、室内プールがいいよ。」という。

 室内プールと言ったって意外に紫外線は多いのだぞ。天井から太陽光を入れて明かり取りしてるから。大丈夫カ?

 それに比べヘルスセンターは蛍光灯だ。ずっと安全!だいいちプールと言ったって水着がないだろ!

 午後、四人で近くのヘルスセンターに乗り込んだ。裸のワタシを見て三人は絶句した。

 最初に出た言葉は「ワーッ、スッゴイ脚線美!」だった。「ホント、細くて長くてかっこいい!」「彩子、ホントに日本人なの!」

 ついで「どうしてこうなの?ニキビも肌荒れも全くないし、それにシミもあざもほくろもゼーンブ無いんだからホント驚異ね。」

「色もめちゃくちゃ白いしね。凄いよ。」ときりがない。でもいくらなんでもずいぶんと褒め過ぎよ。 

 三人はワタシの肌をあちこち触りながら感嘆しばし。そしてスタイルの比較になった。

「バストはカワイイのね。」これはワタシのが一番小さいか。ひいき目に見ても。他の三人は恥ずかしくないものを持っている。美千のは形もいい。

 ヒップは美千のが可愛い。二人のはでかい。二人は美千とワタシのヒップを手のひらで軽く触りながら比べている。

「早くこんなになりたいなあ。」「彩子のは随分高いね。ヒップが高いとかっこいいねえ!」

「ウーン、彩子のは意外にでかいよ。でも全く贅肉なしだ!」「美千と彩子は頸と脚の長さが違うんだ!胴の長さは全く同じだよ!」

 これには美千が膨れて逃げ出した。二人は慌てて美千をなだめ三人でワタシの裸の観察。

「離れてみると彩子は背が高いのでヒップもそんなに大きく見えないのよ。これは真似が出来ないわ。」

「そう、肩幅だって美千より広いし、腰幅だってしっかりあって特別細い訳ないのよ。背が高いと得ね。」

「裸で見ると彩子の身体はいい形してるのがよくわかるね。顔だけじゃなくてどこ見てもため息が出るほどいい形なんだから羨ましいよ!」

「ホント、バランスもいいし形も綺麗ねえ。ウエストもチョー細いし、ヒップなんかも最高のラインよ!」「頸もナッガーイ!」

 コラコラ、他人のものはなんだってよく見えるものなんだよ!

 四人で順に体重計にのった。なんとワタシと美千とは大差なかった。これにはワタシ自身もいささかびっくり。

「やっぱり彩子は細いからかなあ?」「いや贅肉が付いていないのよ、きっと!」
と三人は感嘆しきり。

 残る二人はやや肥満気味。ウエストが無くなりかけている。ここから解決だと確認し合った。身体を見せ合っただけで、この後お湯にも入らずに帰ったの。
                          〜続く〜 


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35回 〜合格祝いで〜

2005/12/08 21:37
『コーチなんておこがましいけど、相談にならいくらでも乗るわ。大切なのはご本人の努力よ。甘いものも駄目なんだから。頑張ってね。まず半年!それから一年間。即効性はないのだから。』

『ウン、頑張る!二人で競争よ。』

『ニキビが無くなっただけでもう最高なんだ!嬉しいな。』
ともう実現できたようなハシャギよう。

 ワタシは

『個人差もあるはずだから、ワタシと同じでいいかどうかはやってみないとね。でも、その個人差は食べ物等少しだけ。基本は皆同じはずよ。』

『ワタシがやっているのだから出来ないことはないと思うけど。二三か月たってみて少しは軌道修正する必要が出るかもね。』
と付け足す。

 ワタシはその夜、更に詳細な具体策を三部プリントしておいた。話しただけじゃわかるまいと思ったから。 

 こんなことが友達の輪を広げる材料になるなんて思いもしなかった。母さん有り難う。…お元気ですか。夏休み中に一度は顔みせに帰りますからね。

 美千らとはその後毎日のように喫茶店で落ち合った。美千の友二人はワタシのトレパン姿を見ては毎日ぶったまげていた。

 それを見に毎日来ているみたいになった。毎日その話題で盛り上がった。こうなるともう同じものは着ることが出来ない。

 ワタシは帽子にもメガネにも気を遣っているのにそれは全く顧みられなかった。ワタシのトレパン姿はそれほどパンチ力があったのだろう。

 思いがけないことだった。全く瓢箪からコマだ。マ、随分お金かけたからナ。

 実技試験も何とか突破した。美千は一発で合格。ワタシは二回目で合格。間に補習があって二回目はギリギリパスだった。試験管はニヤリ笑って危ない所だったよと言ってた。

 四人で合格祝いをすることとなり、どこでするかで行き詰まった。安くていい所はなかなかないもの。

 結局四人の内の誰かの部屋でするしかないということになった。ワタシは第一秘書にお願いしてみた。三人を事務所に呼んで半日過ごしてもいいかと。

 秘書は時給がつかない事務所の留守番を条件にOKしてくれた。電話や来客があれば対応するということだ。

 日曜日の半日三人は事務所に来てワタシの部屋で談笑した。口にするものはお茶やミルクティ、それになるべく果糖の少ない果物類だ。それだけで楽しかった。

 最も盛り上がったのは三人がワタシの衣料を点検した時。次々と引っ張り出してその長さとカラフルさに嘆息。

 やになっちゃったのは三人が下着類に手を出した時。「アッ、それ駄目!」と制止する前にショーツは三人の手に。

 忽ちあのフリル付きのセクシーなのが見つかってしまった。「キャー!」三人は大喜び。

 そしてうろたえるワタシを見て笑い転げる。まさか「それ、ショーツ泥のオトリ用よ。」とも言えず、ワタシは弱った。             〜続く〜
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34回 〜美千の親友と〜

2005/12/08 19:08
 教習所は順調だった。美千もワタシも教科は、四苦八苦する男どもを尻目に悠々合格。構造には少々辛いものがあったけど、とにかく丸覚え。

 運転は美千の方が上手だった。ワタシは美千の実習車の後部座席に乗せてもらい要領を飲み込んだ。

 そのころワタシは美千に教習が終わってもずっと友達でいたいと気持ちを伝えた。美千は

『私もそれを言いたかったのだけど、彩子の位が私と違いすぎるように思えて言えなかったの。だって彩子はA大だもの。』
と大喜びだった。

 美千は更にこういう。

『私の親友が彩子に会いたいと言ってるけど、よかったら会ってやってくれない?』

 思いがけない展開だったけど、美千の親友なら間違いないだろうと

『いいわ。ワタシには友達が少ないから大歓迎よ。でも、まさか男じゃないよね?』
に美千は吹き出した。

『男の友達だったら絶対に彩子には紹介しないわ。だってとられること間違いないから。』
と美千らしくない冗談。

 美千の親友は二人、ワタシたちの教習が終了する頃やってきた。ワタシの予想して通り二人とも好ましい印象だった。少なくともいろいろに見られるワタシよりも好ましいはずだ。

 二人は最初ワタシを見た時、息をのんだように見上げていた。四人で喫茶店へ。男どもがその様子を残念そうに見送っていた。

 と見たのはワタシの自惚れか。しかし、美千の「フフ、いい気味!」のつぶやきに「やっぱり。」と安心したワタシ。

 喫茶店では盛り上がった。美千が両方を紹介してくれた。美千はワタシのことを

『見かけは派手だけど内は純でとてもいい人。男を見下して言い寄る男を英語で蹴散かす猛者の一面を持ちながら、着るものに悩んでいたり女の友達を捜して慎重に私に繋がりを求めてくる所があったり,とても面白い子なの。』
と紹介してくれた。

 ワタシはミルクティでのどを潤しながら笑顔を忘れない。美千ら三人ともワタシに習ってかミルクティだ。

 どうやら二人は美千からワタシの秘法を聞いているらしい。盛んにワタシの美容法を質問してくる。

 スリムな美千はそれほどでもないけど二人にはかなり悩みがありそうだ。二人は不思議なものでも見るようにワタシの肌をしげしげと見たり、そっと私の手の肌に触ったりしてため息を漏らしている。

「羨ましい!」二人異口同音。ワタシは母さん譲りの方法を更に詳しく話す羽目に。UV防除、睡眠や生活リズムやストレスや運動等の生活に関わること。

 それに食べ物の栄養上の注意点等々。要するに外側からも内側からも完璧にしてやれば皮膚も黒髪もこんな具合に保てるの。ワタシがいい見本!化粧品は一切使ってないわ。いつもスッピンなの、と。

 二人は「エッ、スッピン?これで!」と目を丸くしてワタシの顔をのぞき込む。三人とも感嘆しきり。二人は

『私らも彩子みたいになれるかね。半分でもいい!ニキビとシミが無くなれば文句ないけど、どう、コーチしてくれる?』
とワタシに詰め寄らんばかりの様子。

 よほど悩んでいるんだ。美千はと見るとニコニコとワタシらを見守っている。こちらはそう切実ではなさそう。そうか、ワタシに会いたかったのはこれだったのかナ。                     〜続く〜
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33回 〜二回生騎士〜

2005/12/08 07:40
 奥さんはワタシの平素の着回しについてもどうやらかなり気がかりにされているみたいなの。

 で、ワタシは毎日の服装を写真に取り奥さんに見てもらって、自分のセンスを磨く材料にしたらと思いついた。

 機材をどうするか。ワタシはカメラを持っていない。ワタシは二回生騎士を思い浮かべた。ワタシを写したがってカメラを持ち出してきた彼を。

 電話で相談すると大喜びで貸してやると言う。彼はわざわざ事務所まで持ってきてくれて三脚に据えてセルフタイマーの使い方を教えてくれた。

 彼はやたらワタシの部屋を見たがった。見てどうしようというんだろ?ヤダけどカメラ借りたばかりだから仕方なく彼を私的スペースに入れたの。誰にも言わないという約束をして。

 彼はワタシの部屋を珍しそうに眺め回して「綺麗にして居るんだね。」と。なんだよこいつ、若い女性の部屋を覗いたりして、悪い趣味!

 ワタシの周りにはどうしてこんなやつしか現れないの?後で知ったのだけど、この時ワタシのしたことは、男に暗黙のOKを出したことになるんだって。なんにも知らない無防備なワタシなんだから…。

 あっ、そうだ、部屋の隠し撮りの方法も聞いてみるか、ワタシは目的は聞かないでと先回りして相談してみた。

 彼は研究してみると約束してくれた。なるべく安くつく方法をと頼んでおいた。そんなには当てにしないでおこうと思いながら。

 二回生騎士は私の部屋に大いに未練を残した面持ちで帰って行った。ワタシはこいつには今後あまり関係を持ちたくないなあと感じた。

 ワタシの部屋にこだわったことがそう感じさせたのか。あんな隠し撮りの相談なんかしなきゃよかった!ったくあとの祭り!

 それにしても危うかったなぁ。あんな男をプライベートスペースに入れるなんて。やっぱりワタシってヌケてんだ。               〜続く〜
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32回 〜事務所で〜

2005/12/07 20:54
 午後の事務所勤めはいつもと変わりなかった。秘書ら三人は午後になると事務所を私に任せて出払うことが多かった。午前中は一人は残っているようだけど。

 三人のうち一人はいつも議員についているらしかった。第一秘書がいつかこぼしていた。「三人では忙しすぎるなあ。常時電話番がほしいよ。」

 しかし、新人議員ではそう余裕はないらしい。午後のワタシには秘書が集めた資料の整理やとりまとめ、文書の作成など次々仕事が待っていた。

 電話番も重要な仕事だ。受けた内容を適切に処理しなければならない。ワタシに一番プレッシャーになったのはこのことだ。

 急ぐ用事は秘書のうち誰かを呼び出す必要があった。携帯電話の無かったこの時分のこと、ポケベルで苦労したなあ。

 一週二週と慣れていくと、ワタシの半日事務所勤めも堂に入ってきて秘書らは安心して出払った。

 そうなると事務所の前が男子学生らによって占拠される状況になったものだ。学生らは二三人でやってきて交代でのぞき込んで近くの喫茶店で時間をつぶしてまた現れる。

 よほど暇なんだ。今から考えるとワタシが事務所から顔を出すハントの機会を狙っていたのかもしれない。これは第二秘書の意見。

 図書館の本を読む時間も次第にとれるようになって、ワタシは慣れない内容に取り組んで汗だくだった。

 これが将来の糧になると思うと眠気を追っ払いながら頑張った。小さい時にいつの間にか身に付いた凝り性と根気良さとがこの時も大いにものを言った。

 楽しみにしていた第一秘書の奥さんの所へはガイドの仕事のない土曜日に招待された。マンションの一室。

 可愛い女の赤ちゃんがねていた。キッチンで料理のいくつかを基本から教わった。それを一緒に戴いてお暇した。今度はご贔屓のプデックに連れて行ってもらう約束をして。

 プデック行きは二週後の日曜日に実現した。奥さんの勧めるものは少々は散財するつもり。

 奥さんは赤ちゃんを近くの両親に預けてつきあって下さった。申し訳ない、甘えちゃって。

 プデックは二軒紹介された。服二着とアクセサリー数点とで計二十万円ほど。お金が足りなかった。奥さんのお顔でツケにしてもらった。

 もう二着ほどいいのがあったけど今はお金がない。店長さんはある時払いでいいって言って下さったけど、ワタシはお金が出来たらまた来ますと断った。

 心の中でそれまで売れないで居てほしいと願って。それを察したのかどうかはわからないけれど、店長さんは「売らないでおきましょうね。」と言って下さった。
                         〜続く〜
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31回 〜新しい友と〜

2005/12/07 18:39
 美千との時間は心休まる時だった。由子とはまったく違ったものだった。夏休みだけの友とするのはもったいない気がする。

 その夜、母に教えられた方法を詳しくまとめてプリントしておいた。肌と黒髪とを美しく保つ方法だ。それに身体をスリムに保つ方法だ。

 翌日それを持って出かけながら、美千さえよかったらこの交友は将来へも延長したいと考えていた。

 でもこのことは今すぐ言葉にするのは拙い。少なくとも講習が後半に入ってからでも遅くはない。

 美千は隣に席を取っていてくれた。ワタシが席に着くと無表情に近かった美千の顔に優しい微笑みが浮かんだ。

『彩子はみんなの目を引きつけるように出来ているのね。今日のトレーパンなど私らが着たら様にならないけどあなたが着たらパアーッと辺りまで輝いてみんなの目を引きつけるのよ。』

 これって褒めてるのかなあ?それとも今日のけったいなトレパンスタイルを間接的に批判してるのかな?

 ワタシの今日のトレパンは白地に青紫の幅広いラインが斜めに走っているものだ。ラインは上下にそれぞれ一本だけの型破りなもの。

 わざわざワタシの体型に合わせてスリムに直してもらったもの。トレパンだけでも随分高くつくけど、どれもそうしている。

『やはり変なのね。着るものないからとても無理してるから。』

『そうじゃないのよ。変にとらないで!彩子が着ると見事に着こなしていると言いたいの。すっごく羨ましい!』

『ありがとう。最近ね、ワタシ身につけるものに冒険を試みてるの。それまではまったく見向きもしなかったのよ。だから自信なくて毎日ヒヤヒヤ。変だったら遠慮無くやっつけてね。』

『へえ〜、そうなの?そうは見えないなあ。自信たっぷり!誰も寄せ付けないみたいに。』

『冷やかさないで。あ、これ、昨日約束してたママの秘法。わからないことあったらまた聞いて。』

 その後、美千とワタシはいつも一緒だった。由子にはなにかしら気後れするところがワタシにあったけど、美千とは気分的に対等に付き合えた。

 美千は「今まで私になかった全く新しいタイプのお友達!」と大喜びで私を受け入れてくれた。そのあおりを食った形の男どもは声がかけづらいようだった。
                             〜続く〜 
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30回 〜教習所で〜

2005/12/07 11:32
 ワタシは女性の受講者の中に親しくなれそうな同い年くらいの人物を物色していた。

 二三のその候補者の一人にワタシは声をかけてみた。「夏の実習は辛いわね。窓を開けて後ろを確認するの、熱風地獄!」

 大人しそうなその相手は一寸笑顔を見せただけだった。何となく同性から敬遠されているのではないかという不安が頭をよぎった。

 ワタシは試みに翌日もその相手に声をかけてみた。「隣に座っていい?」と。相手は初めて答えてくれた。「どうぞ。」

 実は、ワタシは今までいつも隣の席を男たちに狙われていた。競って男らはワタシの隣や周りに席を取るの。

 大学と違ってここの男らは猛烈に積極的だ。隣の席取りなど序の口。これも一種の取り巻きのグループ?

 ワタシが初めて女の子の隣に席を取ったその相手の子はやはり大学一期生だった。ワタシもそうだというと相手は急にうち解けてきて言う。

『あなたはいつも男と一緒でしょ。私の隣に座るなんておかしいなあと思っちゃった。』
と。

 そうか、ワタシはそう見られていたのだ。男といちゃついている嫌なヤツ!と見られがちなんだ。気をつけなくちゃ。

 その真面目で大人しそうな子は美千と名乗った。ワタシは翌日からも隣に席を取っておいてと頼んでおいた。美千は綺麗な歯を見せて笑って引き受けた。ワタシはいい相棒を得たと嬉しかった。

 実習は美千の方が先だった。ワタシが実習を終えて帰ろうとするといつものように男どもが数人次々に声をかけてきた。なかなかしつこい奴らだ。

 それを追い払うとなんと美千が現れてワタシを驚かせた。「よかったらお茶にしない?」男たちが去ったのを見て美千はこう言う。

「する!する!」ワタシは大喜び。男どもの誘いには全てひじ鉄を食わせたけど、美千の誘いには飛びついて二人で喫茶店へ向かった。

 美千はなんという控えめな出で立ちなんだ。ほんと好感が持てる!それに比べてワタシのはやり過ぎか。美千に聞いてみよう。

 喫茶店での美千はそれまでの印象と違って饒舌だった。ワタシに心を開いた証拠だ。こんな相手は貴重だ。ワタシはもう一度、大切にしたいと思った。

 美千はワタシの初印象を問われて

『彩子って不思議な印象だったよ。とても発展家のようで、そうでもないようで、派手なようでそれでいて地味にも見えて、一寸近寄りがたかったけどスッゴーク魅力的だった。』

『男を見下して相手にしないというところが見えて凄かった。彩子の身なりはうらやましいほど楽しい!今日のも赤いトレパンの上着にナガーい白の下。大きなメガネでしょ。』

『それにかっこいい帽子、そして白い運動靴。背が高くてスリムな身体にこの出で立ちはもうびっくり!絶対に真似できないわ。いったいどういう人種なんだろうって思っていたのよ。そこに声かけられてほんとビビッちゃった。』

『そんな見方もあるのね。ワタシはこの背丈をもてあましてね、着るものにも困っているの。教習にはスカートはよくないと聞いたからもう困ってトレパンなど変なものに手出したのよ。』

 男を見下しているようだと見られてワタシは嬉しかった。計画通りうまくいってる!

『彩子はもてるわね。羨ましいよ。何もかも揃ってんだから。背丈でしょ、顔でしょ、スタイルも最高。肌も綺麗だわ。どうしたらそうなるの?』

『ママに教わったいろいろな秘法があるのよ。教えようか。』

『ええっ、秘法?そんなのあるの?』

『秘法はオーバーだけど、方法はあるのよ、ワタシの守ってきている方法!』

『彩子ってやっぱりミステリアスなのね。ドキドキするわ。お願い、教えて!』

『わかったわ。明日には全部詳しく書いてくるわ。』         〜続く
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29回 〜夏休みに〜

2005/12/07 07:21
 親衛隊に周囲を囲まれるという不思議な日々が始まって、すぐに夏休みがやってきた。

 この初めての二ヶ月間という長いヴァカンスを、ワタシは父母の元には帰らずに送るという計画を立てた。

 近所の人や高校までの同級生らにこの顔の秘密がばれるのを防ぐためだ。計画の一つは運転免許の取得。

 休みに入る前に二回生の騎士に頼んで申し込みはすませてある。これは午前中だ。

 午後は基本的には事務所勤め。これは第一秘書の了解が得てある。事務所ですることがない時は図書館から政治学関係の本を借りてきて精読するつもり。

 引っかかった箇所はスキャナーでパソコンに取り込んでおく。索引用の見出しを付けて…。後からきっと役に立つはず。

 夏休みのもう一つの楽しみは第一秘書の奥さんからお家へ招待されていること。料理を教えてもらうつもり。

 それに奥さんごひいきのプデックに連れて行ってもらうこと。ここでワタシのステイタスを高める服を見立ててもらう楽しみ。

 
 教習所通いは第二秘書の薦めでトレパンにした。第二秘書はワタシの教習所通いの服装にいろいろこだわったから。「気をつけた方がいいよ。」と。

 スカートは危ないとか、靴は運動靴に限るとか、胸元が開きすぎないシャツがいいとか…。アレッ、どういうつもり?この人!

 ワタシは引っかかった。忘れていたショーツ紛失事件を思い出して。そういえばあれから不審なことが無くて注意が不十分だったかな。気をつけねば。

 教習所では講習の時は感じなかったけど、実習になって男性指導員と二人だけの長い車内を過ごしてみると第二秘書の言葉がなるほどと納得できた。

 男性指導員の視線がワタシの脚や胸元へ度々やってくる気がする。指導員専用のミラーを使ってワタシの顔も度々見ているようなの。

 必要ありそうに装って私の手にも触ってくる。一度や二度ではない。自慢ではないのだけど、私の手は華奢で指は長くそして柔らかい。

 パソコンぐらいで他に使うことがないから。そのステアリング上の私の手をわざわざつかんで操作を教えてくれる教官たち。

 最初はそんなものかと思っていたけど、それが度重なるとハハーン!と思えてくる。男ってチャンスあれば…危ない、危ない!          


 教習所の運転実習はUVの危険大だった。つばの広い帽子は教官から拒否されたのでぐっと狭い妥協できるものに変更。その代わりワタシは平素は使わないUVカットのクリーム類で防衛した。

 受講生たちは大部分若い男女だ。初めの頃はお互いに遠慮がちだったけど、次第に顔見知りになってくると話もするしカップルさえ出来るようになっていた。

 ワタシにもすぐに何人もの男たちが声をかけてきた。ワタシに連れがないとわかると、われがちに誘いをかけるという気配なの。

「終わったらコーヒーしよう!」というストレートなのから「大学生?」という控えめなものまで様々。ここは女の方が多いのに、若い男たちの関心はワタシに集中しているみたい。

 私がなかなか誘いに応じないと知るとストレートな誘いは姿を消した。でもその男たちの中の数人はなお声をかけるのをやめなかった。

 声をかけるというより話しかけるというところかな。「運転、困っていることない?」とか「あの教官、男には厳しいけど女の子には優しいそうだよ。」とか。

 また「出た所の右の店のスパゲ美味しいぜ。」等々。ワタシはよくやるなあと感心しながら適当にお茶を濁し続けた。

 時には英語で煙に巻いたり。しつこいその相手はワタシの流暢な英語の啖呵を聞くと一瞬ポカーンとワタシの顔を見てそして退散していった。
                           〜続く〜
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28回 〜ワタシの原点〜

2005/12/06 18:57
 ワタシの周囲の親衛隊の人数はいつの間にか少ない時で三四人、多い時には十人内外にふくれあがり、背の高いワタシと一緒にぞろぞろと移動した。

 そして教室でダベッたり学食で食事するようになり、ワタシがただ一人になることはもうほとんどなかった。あるとすれば女子トイレにはいる時だけ。

 入学当初のワタシからは想像できない変化だった、でも、事実は、ワタシは依然孤独だったの。

 取り巻きは取り巻き同士で勝手にしゃべり、ワタシがその中にはいることはなかった。ただ取り巻かれているだけのワタシだった。

 この孤独の中でワタシの心は自然に小中高時代のワタシに回帰するのだった。あのころは今とは違う絶望的孤独だった。毎日が絶望の連続だった。

 あのころと比べれば今はまるで違う孤独ではある。しかし、根はつながっている。決してあのころのつらさは私の心の奥底から消え去ることはない。

 あのころの体験を今後に生かしていかねばならない。せっかくここまではい上がってきたのだもの。あのつらさの記憶がワタシにプラスするはず。

 せっかくの体験だ。忘れないであのつらさを今後の私の成長の肥やしにしなくてはならない。このことはワタシの原点!忘れてはならない原点!
 
 ワタシは親衛隊に囲まれながら、彼らとは全く違った次元の世界を歩いていたの…。
 

 それはそれとして、ワタシは自分の計画を実現するためには、今は自分の魅力をもっと増さねばならないと思った。ワタシは服装にも気を配り始めた。

 毎日同じものは着ない方がいい。そのためにはプデック詣でが必要だった。そのときは由子にも応援を頼んだ。由子のセンスは貴重だ。

 由子はピアスも勧めてくれた。ブローチとかネックレスなど今までワタシが見向きもしなかったものにも丁寧に案内してくれた。

 土日のガイドがない日に、第一秘書の奥さんにワタシの持ち物をすべて見てもらって今後どういう補充をしたらいいかの教えも請うたの。

 この奥さんもなかなかのセンスの持ち主だ。ワタシのおしゃれの研鑽にとても援助して下さった人だ。由子とともに。

 今まで殆どお洒落には縁の無かったワタシのこと、服装に始まりアクセサリーにまで及ぶ新たなお洒落にはなんだか晴れやかな発表会に出るような楽しい緊張が毎日あったの。

 すっかり板について慣れるまでにはドキドキの毎日だった。時々顔を合わせる由子はワタシの変化を楽しみに見てくれ好意的な感想をささやいてくれた。

 このワタシがこんなお洒落とブリッコを始めるなんて天変地異もいいところ!でもやはり生い立ちの血は争えないもの。

 懸命に逆立ちしてもワタシのお洒落はずいぶんと押さえたものだった。ホント、由子などから見ればとてもお洒落などと呼べるものじゃなかったらしい。


 そんなワタシの秘かな冒険をよそに、親衛隊の連中は相変わらずワタシの周囲に群がりワタシとの接触を楽しんでいるようだったの。

 くだらない冗談言うヤツ、まじめにゼミの中身を討論したがるヤツ、音楽について話したいやつ、映画好きなヤツ、ただ黙ってワタシを見ながらついてくるヤツ。

 全くもう様々。みんなただワタシとつながることを望んでいるだけの連中。何でもいい、とにかくこの状況に慣れなければならない。

 この顔と身体とをこの先有効に役立てるためにまずは慣れねば。その意味では今は大切な学習の時なの。

 衣服をかっこよくし、アクセサリーを少しずつ楽しんでいると、ワタシは自分のアイデンティが高まる思いがしてきたものだ。

 とにかくワタシは何が何でも外も内も高めねばならない。急激な変化でそれがやけに加速されたけど、でも生きてる感じがこんなに新鮮で楽しいのは初めての体験だった。

 もう毎日がワクワク!たまらなかった。実は、とてもじゃないけど疲れるのだけど。                         
                              〜続く〜


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27回 〜心のSOS!〜

2005/12/06 15:03
 このようにしてワタシは多くの取り巻きに囲まれる生活に一気に突入し、その状況を受け入れざるを得ない有様になっていた。

 しかし、慣れないその状態には「心」は手こずっていたらしい。あまりに晴れがしすぎるの。とにかく落ち着かない。

 あれほど早かった夜の寝付きも悪くなるばかり。ついには自信のあった体調までも拙くなってきた。

 ワタシは不本意ながら母さんに電話し、その助言で病院のカウンセラーにも相談した。

 久しく会わない由子にもSOSを出した。図書館で落ち会った由子はお化粧が濃くなっていた。彼とは半同棲の生活らしい。由子はワタシの悩みを聞くと

『彩、それは贅沢な悩みョ。彩がそんなに発展するとは思わなかったわ。正直、うらやましいわね。やっぱり彩はたいしたヤツだったんだ。私の目に狂いはなかったんだ!』
と変に嬉しそう。

 由子の助言はこうだ。重荷に感じないこと。そのためには彩の顔や身体を信じて男たちに対して精神的に優位に立つこと。

 要するに男どもを見下すのよ。彩の顔と身体だったら十分に出来るわ。大丈夫。自信をお持ち!私も応援するわ。と。

 そうか。由子の助言を取り入れようと思った。もっと自分の新しい顔に自信を持とう。

 その顔に集まった男どもなんだ。身体だけでは一人だって集まらなかったではないか。

 由子はワタシの顔と身体と言った。そうか、男どもはこの身体にもひかれるのか。身体と顔との両方で生かせるのだ。

 よし、男どもを見下すのだ!ま、ワタシは背が高いから見下すのは慣れている。それを精神的にまで広げればいいの。

 ワタシに参った男どもの集まりだもの。ワタシの流し目一つでイチコロなんだ!アレッ、これってワタシとしてはとてもオーバーだョ。彩、お銚子にのらないの!

 ワタシはその夜また鏡に向かって百面相。どういう顔したら男をイチコロに出来るか?どういう顔したら男を見下せるか?

 いろいろやってみたけど納得できない。相変わらず大きなつぶら瞳が鏡の中からワタシを見つめている。

 ツンとすました可愛い鼻筋が、お人形のおちょぼ口と共に、その大きな目に従っている。これにものを言わせる手をつかまねば…。

 ワタシは翌日からはいつも口元に笑みを忘れないようにした。そうすると自然に目元にも笑みが生じるの。これが昨夜発見したワタシの表情の中で一番のウリと見たから。

 このことは整形直後に誓ったことだった。再確認!これと同時に姿勢を一段とシャキッとさせるブリッコ作戦を強化するように努めること。

 今までは頸をやや前かがめにして急ぎ足だったけど、今後は顔を起こしてシャキッとさせワタシのウリの姿勢とするの。

 これが気位の高さを強調して大きな武器となると思ったから。とにかく焦らず、気にせず、悠然と、そして新しいワタシを見失うことなく!

 これを今後ワタシの武器にしていくの。これ、ホント懸命な背伸びだったな!
                            〜続く〜 
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